やんちゃだった子供時代を思い出させる作品
――『ぼくらのよあけ』は大人が観ても子供が観ても、世代間を共有して楽しめるアニメーションでもありますよね。
ナナコ(※劇中に登場する人工知能搭載型家庭用オートボット)の感じとか、液晶が空中に出てくる感じは、今の子供たちだったら「超未来じゃん!」みたいな感じじゃなく、普通に観られるのかなと思いますよね。絵もキレイで、キャラクターもみんなかわいいですし。何より親に秘密のことがあるということが、子供はやっぱりわくわくすると思うんです。本当はやってはいけないかもしれないけど、友達同士で「親には内緒ね」と言って夏を過ごしているあの空気は、子供が一番わかるんじゃないかな。
――三浦さんも、似たような経験を思い出したりしましたか?
作品では、悠真たちが団地の上にのぼったりするじゃないですか。ああいうことをやっていたよな、と思いました。僕、小学生のときに住んでいた家の近くの公園に、海賊船みたいなのがあったんですよ。海賊船がアスレチックになっていて、帆とよばれるところがちょっとジャングルジムみたいになって。上に見張りとかが立つようなところがあるけど、たぶんそれはあくまでも飾りで、結構高いからどう考えても登ってはダメなんですけど…、登って手を放して「いえい!」みたいなのは、やったなと(笑)。
今大人になってから振り返ると結構危ないなと思うけど、そういう好奇心みたいなものを、あの時代は無知ゆえに爆発させていたんだなって。それを見守っていた大人はすごいなと思いますしね。危なっかしいことも含めて、子供の持つ好奇心の一種なんだろうなと思うんですよね。自分は子供を持っている身になったので、ちょっと複雑ではありますけど(笑)。
――現在3人のお子さんがいらっしゃいます。ちなみに、パパになったことで楽曲制作やパフォーマンスなど、どこか変わったと思う面はありますか?
子供が生まれて作品に対しての何かが劇的に変わった、みたいなことはないですけど、家族と過ごしていくと、いろいろな気づきは当然あるんです。子供は生物(せいぶつ)としてすごい面白いんです。子供は“未来”じゃないですか。これからどんどん細胞が分裂していって大人になっていく、未来そのものだから。そばで未来を見ている感じが、なんかすごいワクワクしますよね。それがもしかしたらどこかで作品に影響を与えたり、モチベーションにつながっている、みたいなところがあるのかもしれませんね。
――ちなみに、子守唄を歌ったりもしますか? 先日出演されたNHK『あさイチ』では、『燦燦』を聴くと赤ちゃんが泣き止むという全国のお母さんからの感謝もありましたが。
ああ、ありましたね! 僕は自分の子供が赤ちゃんのとき、寝てくれないと歌ったりしたこともありますね。それでも全然泣いてますよ、泣き止まなかったです。この歌はダメなんだね、みたいな感じでした(笑)。
三浦大知(みうら・だいち)
1987年8月24日生まれ、沖縄県出身。1987年Foberのメインボーカルとしてデビュー。2005年3月にシングル「Keep It Goin’On」でソロ・デビュー。天性の歌声とリズム感、抜群の歌唱力と世界水準のダンスで人々を魅了。2019年には「天皇陛下御在位三十年記念式典」にて琉歌「歌声の響」を歌唱。2022年、連続テレビ小説「ちむどんどん」の主題歌となる「燦燦」を、10月24日には劇場アニメ「ぼくらのよあけ」主題歌の新曲「いつしか」を配信リリース。
映画『ぼくらのよあけ』
舞台は2049年の夏。東京・阿佐ヶ谷団地に住んでいる小学4年生の沢渡悠真は、間もなく地球に大接近する「SHⅢ・アーヴィル彗星」に夢中になっていた。そんなとき、悠真の相棒、人口知能搭載型家庭用オートポット・ナナコが未知の存在にハッキングされた。「二月の黎明号」と名乗る宇宙から来た謎の存在から「宇宙に帰るのを手伝ってもらえないか?」と言われる。2022年より悠真が住む団地の1棟に擬態して休眠していたという。その夏、子供たちの極秘ミッションが始まった。
監督:黒川智之 脚本:佐藤 大 原作:漫画「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
出演:杉咲 花、悠木 碧、朴璐美ほか
主題歌:「いつしか」/アーティスト:三浦大知
2022年10月21日(金)全国公開
https://bokuranoyoake.com/
2022.10.21(金)
文=赤山恭子
写真=佐藤 亘