小布施堂には遠方からの客人をもてなすための宿泊施設もあります。「桝一客殿」は、古民家や蔵を移築し、主が我が家でもてなすように、という気持ちを込めて造られた場所。随所に見どころがあり、小布施がいかに文化的な街であるかがよくわかります。
ダークブラウンと白の上質な世界観
商家らしい荘厳な雰囲気さえある門をくぐると、そこはフロントとロビースペース。とても落ち着いた雰囲気で、あたたかな照明とウッドに迎えられてほっとひと息。賑わう街の喧騒を一気に忘れてしまいそうです。
和のモチーフながらモダンな空気をまとっているのは、パーク ハイアット 東京も手掛けたアメリカ人デザイナーのジョン・モーフォード氏が基本設計をしたからでしょうか。長野市内から移築した土蔵などを組み合わせ、古くどっしりとした建物に身を置くことができます。
中庭は美しく手入れされ、池には立派な鯉がゆうゆうと泳いでいます。移築された古い建物が美しく配されているのがよくわかる場所です。
北斎×モダン。ゲストルームの見どころはお風呂
小布施といえば葛飾北斎が晩年を過ごし、多くの作品を残したことで知られています。「桝一客殿」にも、たくさんの北斎のモチーフがところどころに。とはいえ、例えば絵の一部をルームプレートやキーに使ったりと、控えめで、それがむしろ印象的です。
照明をぐっと落としたモダンなゲストルーム。シンプルで、身も心も休まります。1階の客室は坪庭が、2階ならテラスがあって、窓の外の鳥の声を聞きながらのんびり。
とはいえ、シンプルなだけではありません。目を奪われるのがバスルーム。
ベッドルームに対して、サンルームのように明るい洗面台の奥にあるバスルームでは、浴槽がガラス製で、深さもたっぷり。「温泉ではないけれど、ゆっくり浸かって帰ってほしい」という気持ちから生まれたのだそう。
2022.10.08(土)
文=CREA編集部
写真=鈴木七絵