――そういえば、松緑さんは歌舞伎座の楽屋でも伯山先生のCDをかけてらっしゃると聞きました。
松緑 今日もずっとかけておりました(笑)。伯山先生の講談を聴いていると、モチベーションが上がってくるんですよ。
伯山 うわ、こんなに嬉しいことはないです。恐縮です。
松緑 僕はわりと口が重い方なのですが、ここ数年、「松緑の台詞の言い方が変わってきた」と言われておりまして。自分ではまったく意識していなかったんですが、CDや寄席で話芸に接することで、講談のリズム、うねりのようなものが耳に残って、それが影響しているのかもしれません。
伯山が解いた松緑の“呪縛”!?
伯山 松緑さんに寄席演芸に触れていただけるのはうれしいなあ。
松緑 私の祖父である二代目松緑は先代の柳家小さん師匠と仲良くさせていただいていましたし、父の辰之助は古今亭志ん朝師匠と交流がありました。僕も20代の頃には結構、落語に触れていたんですよ。
伯山 そうだったんですか。
松緑 ところが、とある落語家の方とケンカしたことがありまして……。
伯山 ええ! そんなこと初めて聞きましたよ。
松緑 そうしたことがあって、演芸から遠ざかっていたところ、伯山先生がその呪縛を解いてくれました。
伯山 いやあ、そうなんですか。それにしても、その落語家の方が誰かが気になるなあ。まだ、生きてらっしゃる方ですか。
松緑 それは申し上げられません(笑)。
伯山 ああ、気になる。でも文春オンラインだから、松緑さん言わなくていいです(笑)。
歌舞伎座で講談を上演する意義
――9月28日の講談会ですが、今の歌舞伎座が開場したのは2013年で、演芸が上演されるのは初めてとのことです。この意義は大きいですね。
伯山 ハッキリとはわからないのですが、講談としては昭和、平成、令和を通して初めてのことかもしれません。松緑さんにたいへんな尽力をしていただいたことに感謝するしかありません。
松緑 いえいえ、そんなことは……。
2022.10.02(日)
文=生島 淳