ところで、市販の胃腸薬は何を飲めばいいんですか…?
最後に、薬について訊いてみた。
市販の胃腸薬などは利用価値はあるのだろうか。
「吐き気があって胃酸を止めたいときにガスター(H2ブロッカー)を利用するのは妥当な選択です。
Kさんのように“胃が重い”という人は胃の粘膜にキズがある可能性があるので、粘膜保護剤のセルベックスを使うこともありますが、これは効く人と効かない人がいるので、頼り切らないほうがいい。粘膜のキズにはアルギン酸含有の薬が効果があります。
市販のドリンク剤の多くは糖分とカフェインが入っているので、カフェインが胃に刺激を与えてしまう危険性がある。でも糖質は摂りたいので、同じ飲むならお湯にはちみつを入れて飲むほうが胃にやさしいし、理にかなっています」
前述のように胆汁が逆流しているケースで大久保医師が勧めるのがウルソという肝機能改善薬だ。
「この薬は古い胆汁を大腸側に流してくれるので、多少下痢気味にはなるものの、胃の症状改善効果はあります。でも、それだけに頼るよりは、少しでもいいので消化のいいものを食べて腸を動かすことが先決なのですが……」
「こんな時には要注意。早めに医療機関へ」
最後に大久保医師が、「こんな時は要注意」というポイントを指摘してくれた。
「黒い便が出たときは危険信号です。便が黒いということは胃や十二指腸などの上部消化管で出血が起きていることを示唆します。この場合は様子を見ないで医療機関を受診してほしい」
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取材を終えて帰路に就くK氏。
「おかゆだおかゆだ。楽しみだなぁ」
と楽しそうだ。
少なくとも自らの食生活の方向性に一筋の医学的な指針が与えられたわけで、その喜びは計り知れないのだろう。若いってすばらしい。
その点あきらかに肥満傾向の筆者は、「一食抜く」か「量を減らす」ことを真剣に検討しなければならなくなってしまった。楽しみどころか残念でしかない。
同じ取材をして、こうも結果に差が出るとは……。
結局一人ストレスを抱えて、胃が痛くなるのだった。
2022.08.31(水)
文=長田 昭二