PMSとは、「月経前症候群」(PreMenstrual Syndrome)、生理前の不調のことです。PMSの症状は、仕事や家事の効率、さらには人間関係にまで影響を及ぼす可能性があり、本人だけの問題にとどまりません。
CREAがPMSを考えるシリーズ第4回、女性の人生でずっと体をサポートしてくれるお医者さん、「婦人科」について、小川真里子先生に聞きました。
婦人科、行ったことありますか?
CREA読者のお悩み ケース5
「婦人科に行けばラクになるのかな……という症状がいくつかあります。でも毎日忙しく、婦人科はなんだか敷居が高いこともあり、結局、まだ行ったことがありません。生理前にはいつも頭痛などの不調がありますが、市販の鎮痛剤でやりすごしています」(会社員 27歳)
──雑誌でも、婦人科受診を!という記事を作っていますが、「なるべく行きたくない」という声は多いです。婦人科は他のお医者さんと比べても、よりプライベートをさらさないといけないような感覚もあって、どうしても行きにくさを感じてしまいます。
小川先生「婦人科は女性の一生とも深く関わりますし、本当は、些細なことでも相談できるかかりつけ医がいたほうが安心できるはずなんです。発想の転換で、行きにくい場所だからこそ、あらかじめかかりつけ医を決めておく、と考えていただけるといいのですけど」
──かかりつけ医どころか、定期的な婦人科検診を受けていない方もとても多いようですね。
小川先生「やはり、内診への抵抗感が強くあるのでしょうね。もちろん、検査内容によって内診を避けて通れない場合もありますが、たとえばPMS(月経前症候群)のご相談であれば内診は必須ではありません。『内診はしたくない』と意思表示していただければ、無理強いをすることもありません」
──「内診はしたくない」と伝えてもいいものなんですね。
小川先生「多くの方が悩んでおられるPMSでしたら、診察というより、相談しに行く、くらいの気軽さで来ていただけるのが理想です。症状の重さにかかわらず、婦人科系の不調によって自分が少しでもつらい思いをしているのならそれは改善したほうがいいでしょうし、改善したい気持ちが少しでもあるのなら婦人科医を頼ってほしいです」
──些細な不調でも、毎月あるのとないのとでは、生活のクオリティが段違いですね。
小川先生「本当にその通りで、私の患者さんでも、婦人科に通うようになってQOLが上がったという方がたくさんいます」
──どのような場面で生活の質がよくなったと感じるのでしょうか?
小川先生「PMSや月経困難症の改善に対しては、低用量ピルをご提案することが多いのですが、低用量ピルは不調をやわらげることに加えて、月経のコントロールが可能になります。
すると、大事な試験や仕事、旅行などのイベントと月経が重ならないようにもできるので、当然、QOLは上がりますよね」
──確かに、生理にまつわる憂鬱から解放されますね。でも、現実的には、低用量ピルについても、診察同様、ハードルが高いと感じている人が多い印象です。
小川先生「ピルの種類は複数あるので、自分に合うものを見つけることができますし、もちろん、ピルに抵抗感のある方には漢方薬や処方薬のご提案もできます。
ただ、低用量ピルをおすすめするのは、月経の回数を減らす方法も選べるから、ということもあります。120日間飲み続けられるタイプのものでしたら、うまくいけば月経を4カ月おきにすることもできます。
子宮内膜症などの病気は、月経回数の多さが一因だとも言われていて、ピルで月経回数を減らすことで、そういった病気を予防することもできるんですよ」
──婦人科へ行くことで正しい情報を医師から直接聞き、どうしていきたいかを自分自身で判断することが大事ですね。
2022.09.15(木)
文=今富夕起
イラスト=竹井晴日