PMSとは、「月経前症候群」(PreMenstrual Syndrome)、生理の前の不調のことです。
PMSの症状は、仕事や家事の効率、さらには人間関係にまで影響を及ぼす可能性があり、本人だけの問題にとどまりません。
CREAがPMSを考えるシリーズ第3回、女性の仕事とPMSについて、小川真里子先生に聞きました。
仕事が辛くて辞めたくなる。その原因はPMSかも?
CREA読者のお悩み ケース3
「新卒で就職しましたが、どうにも体調不良の日が多くて遅刻や欠勤が続き、居づらくなって2年で退職してしまいました。婦人科の受診を勧められて行ってみたら、体調不良はPMSのせいだったとわかり……! いまは薬で症状も落ち着いて、あらためて就職活動を始めたところです」(会社員 26歳)
──CREA読者は仕事を持つ女性が多いのですが、中には、体調不良が原因で退職せざるを得なかった方もいます。この方は、退職後にPMSが原因だと分かったということなのですが……。
小川先生「まずは、原因がわかったことで対処ができ、症状が落ち着かれているようでよかったです。その一方で、やはり医師の立場からは、退職を決断する前に受診する機会があれば、結果は違ったのではないかと思わずにはいられません」
──実際に、患者さんの中でPMSを原因として仕事をやめたり、諦めたりしている女性はいますか?
小川先生「ときどきいらっしゃいます。特に、PMSと月経困難症(生理痛がひどい状態)の両方があると、月の半分近くは不調を抱えながら過ごすことになってしまい、それが仕事を辞めることにつながってしまうケースは多いと思います」
──具体的には、PMSがどのように仕事に影響するのでしょうか?
小川先生「手足のむくみ、頭痛、倦怠感など身体的に不快な症状があるとそれだけで気分がふさぎがちになりますし、集中力が続かず仕事がはかどらない、普段はしないようなミスをする、精神的な浮き沈みが激しいとか、苛立ちを抑えきれずに人間関係に悪影響を及ぼすなど、PMSの症状が多岐にわたる分、それが仕事にどう影響するかも本当に千差万別です」
──前向きに仕事に取り組みたいのに、その意欲とは裏腹になぜだかどうもうまくいかない。その原因がPMSにあると気づかずに過ごしている方も多そうですね。
●2人に1人は「仕事や家庭生活に影響あり」
PMSの諸症状による仕事の効率や生産性、家事への影響は?
●PMSの諸症状により仕事のパフォーマンスが半減以下になる人が45%
小川先生「この調査では、PMSの自覚がある方の2人に1人がPMSの症状によって仕事や家庭生活に影響があると回答していますし、仕事に至っては、PMSによって仕事のパフォーマンスが半減以下、という人が45%もいるという結果も出ています」
――仕事に対応する能力が半分以下になるって、大変な状況ですよね!
小川先生「そうですよね。世の中の女性の約半数が、PMSによって生活のペースを乱されたり、自分の実力を出し切れていないと感じていると推測できます。ですから、まだご本人に自覚がなかったとしても、『なぜだか今日は仕事がはかどらない』という日が月経前に偏っている場合は、それがPMSである可能性はとても高いと思います」
──PMSによって実力が発揮できないことでストレスが溜まったり、うまく立ち回れない自分に自己嫌悪したりと、負のループに陥っている方も少なくないでしょうね。
小川先生「ストレスはPMSの症状をひどくする大きな要因ですから、日頃から、ストレスケアを心がけるだけで症状の現れ方や感じ方が変わってくると思います」
──どのようなストレスケアがおすすめですか?
小川先生「私が患者さんによくお伝えするのは、1日10分でも15分でもいいから、何もしない時間を作りましょう、ということ」
──アロマセラピーもおすすめと前回おっしゃっていましたよね。
小川先生「ただし、アロマを焚きながら仕事をしてしまったら、意味がないんです。せっかくのリラックスのためのアロマの意味がなくなってしまいます。アロマがあってもなくても、1日10〜15分、目を瞑ってボーッとしてください。私も実践していますが、この短い時間の中で、気づくことがたくさんありますよ」
2022.07.15(金)
文=今富夕起
イラスト=竹井晴日