その上で「サシが多いほどいい肉」ではなく、「この肉はサシが多いので、しゃぶしゃぶ向き」 「この肉はサシがほどほどなのでステーキ向き」というふうに適性を定義する。「マーケット」ではなく「お客様」に評価される肉かどうかを食肉卸や精肉店が真摯に考え、「A5」に拘泥することなく、好まれる肉の基準を再構築する。

 あくまで嗜好品なのだから、国内市場向けと海外市場向けに異なる基準があってもいい。35%を基準としても、海外向けとしては、サシは十分多い。そのサシの入った黒毛和牛を海外にどう届けるか。

 そこで焼肉だ。

 現在の日本の焼肉は独特の業態であり、鮨やラーメンのようにパッケージで丸ごと提案する手法を模索する。格付けから肉の切り方、料理の手法まで、「和牛」の届け方にはまだまだ工夫の余地はある。和牛と食肉の明るい未来に向けて、「焼肉」が担うことはあるはずだ。

「俺は偉いのだ」「焼肉を知っている」と見栄を張りたい人がトングを持つと…焼肉のスペシャリストが明かす“間違えた焼き方”の典型例 へ続く

2022.07.26(火)
文=松浦 達也