しかし、絶望するにはまだ早い。社会主義の政策が女性の立場を大きく持続的に押し上げた事実は過去に確かにあったのだ。現在、ロシアのウクライナ侵攻により社会主義を公平に語ることは難しくなっている。だが著者は、資本主義と社会主義という二者択一ではなく、両者の良いところを取り悪いところを捨てるというシンプルな提案を具体的に示す。戦争など望んでいない「ごく普通の人びと」のために。「ごく普通の人びと」の願いは、自由に誰かを愛せる安全で安定した生活が欲しい。たった、それだけなのだ。
Kristen R. Ghodsee/ペンシルベニア大学教授(ロシア・東欧学)。カリフォルニア大学バークレー校でPhD取得。2018年に出版された本書は、これまでに世界14カ国語で刊行されている。
いしだつきみ/1983年生まれ。東京育ち。物書き。著書に『ウツ婚!! ――死にたい私が生き延びるための婚活』。
2022.07.21(木)
文=石田月美