注目するのは、「♪笑ってもっとbaby」から始まるBメロ(サビ)である。ビートルズ《サムシング》風に静かなAメロに対して、リズムが躍動的になる。具体的に言えば、少しレゲエっぽくなる。

 言わば「うっすらレゲエ」。特にベースの動き方と、後拍が強調されたギターのカッティングは、明らかにレゲエを意識したものと言える。

 レゲエは当時、最先端としてもてはやされていたリズム。レゲエ界を代表する音楽家と言えばボブ・マーリー。《いとしのエリー》発売直後の1979年4月には、ザ・ウェイラーズを率いて来日公演も行っている。

 当時中1の私は、背伸びして雑誌『POPEYE』をたまに立ち読みしていたのだが、「今、レゲエが面白い」「パンクは終わった。これからはレゲエだ」的な文脈で、大々的に紹介されていたのを思い出す。

 ただし《いとしのエリー》の「うっすらレゲエ」の原典は、「こってりレゲエ」のボブ・マーリーと言うよりも、同じく「うっすらレゲエ」であるイーグルス《ホテル・カリフォルニア》(1976年)などのように思われるのだけれど。

 余談だが、『1979年の歌謡曲』で私は、チューリップの傑作《虹とスニーカーの頃》が「うっすらレゲエ」で、同じくイーグルスの影響が強いと断じた。70年代後半、ビートルズからの影響を一旦咀嚼したニューミュージック勢に影響が強かった洋楽を3つ挙げるとすれば、イーグルス、ボストン、クイーンである。

 


 さて、ここで注目したいのは、そんな「うっすらレゲエ」に乗った歌詞だ。「♪笑ってもっとbaby」の音韻。「わらって」と「もっと」の「っ」を使った、跳ねるような語感。続くフレーズでも「♪映『っ』ても『っ』と」と跳ねている。

「うっすらレゲエ」と跳ねる語感の歌詞によって、ビートルズ風(≒通俗的)なラブバラードに陥らず、むしろロック的な灰汁が漂ってくる。その一点において、サザンらしさが醸し出され、《いとしのエリー》が《勝手にシンドバッド》とつながってくる。

2022.07.11(月)
文=スージー鈴木