殿下はウイットに富まれているだけではなくて、5~6人で集まってお食事をする時など、たいへん周囲にお気をつかわれます。たとえば6人のうちの5人が学習院の出身者で、話題が自然と学習院時代の先生の陰口だとか、思い出話だとかになってしまうと、どうしたって1人は隅っこで仲間外れになってしまう。そうした時は殿下はさりげなくそのひとに合わせて話題を変えるといった配慮をされる。非常に気配りが行き届いていて、しかもお心が非常にやさしいんですね。

 そうしたご性格は両陛下の影響が強いように思えます。両陛下が老人ホームへの慰問や福祉施設などにお出掛けになって、座り込んで話されたり、背中をさすったりしておいたわりになる。ああしたことはジェスチャーでやっていると思っているひとがいるかもしれませんが、両陛下は本当に心からされていることなんです。殿下はその両陛下のお心を受け継いでいらっしゃるから、おやさしい。世間の言葉でいえば、情が深いということなのでしょう。

 

結婚は「火花が散るような方」と

 そうした長いお付き合いのなかで、私はちょうど殿下の倍の人生を歩んできましたので、何かとよもやま話の折などに、それとなく殿下のお悩みのご相談にのることもございました。

 正直申し上げてお役にたったかどうかわかりませんし、私が殿下に影響をお与えしていたというようなことはないと思います。ただ、結婚観について多少改まってお話ししたことは何度かございました。

 いわゆる若いひとたちの結婚について、年配の者が進んで世話をするということは私はそもそも嫌いなものですから、殿下に対しても「いいお嬢さんだから進んでお薦めしよう」などと考えたことは一度もありませんでした。殿下がお妃候補の方々について、私に意見をお尋ねになられた時には出来るかぎり私の考えを申し上げましたが、そういうこと以外はお妃選びには一切関わらない、という主義を貫いて参りました。自分で相手を見つけてきて、そして納得がいったら結婚するというのが、現代の若者だろうというように思ってきたからです。

2022.06.27(月)
文=鎌田 勇