「ペ・ドゥナが演じてくれたのはもっとも難しい役です。子を捨てる母に批判的でありながら、彼らを追う過程で気持ちが変わっていく。動きのない車内での撮影が大半でしたが、振り向きのスピードやセリフの間合いで、感情の変化をすべて表現してくれました。この作品は、母親になれなかった女性と母親になろうとしなかった女性の2人が“母親”になっていく物語だと自分では捉えていたので、彼女の力は大きかったです」
韓国での撮影については、「いつも通りできた」と語る。
「信頼する通訳の方に現場に就いていただいたので、ストレスはまったくなかった。それに、言葉が通じるからといって何もかも伝わるわけではありませんから(笑)。撮影環境に関しては、週の撮影時間が最大52時間と決まっていて、体は楽でしたね。韓国のやり方を日本に導入してすぐに上手くいくとは限らないけど、学ぶべきところはたくさんあると思います」
これえだひろかず/1962年、東京都生まれ。『幻の光』(95)で映画監督デビュー。『誰も知らない』(2004)、『空気人形』(09)、『そして父になる』(13)など作品多数。18年に『万引き家族』が第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でパルム・ドールを受賞。19年に『真実』で初の国際共同製作作品を監督。本作は、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でソン・ガンホが最優秀男優賞、独立部門でエキュメニカル審査員賞を受賞。
INFORMATION
映画『ベイビー・ブローカー』
https://gaga.ne.jp/babybroker/
2022.06.24(金)
文=「週刊文春」編集部