学生服を着て英語の勉強に熱心、白い軍服を着てお国のために戦おうとする愛国心、なんといっても安子にとことん誠実。松村は空手をやっていたからか、姿勢がよくて正座が似合う。座ったときに腿に手を置く所作がじつに堂に入っている。武道の精神を感じる。

 背が高いにもかかわらず、畳の上での所作が似合うことは貴重である。名作少女漫画『はいからさんが通る』などに描かれる、昔の日本人らしからぬしゅっとした、そんな人は実際にいない、でもかっこいいは正義という感じのビジュアルなのだ。丸顔と面長、親しみやすさとノーブルさの中間的な輪郭は万能である。

 ジャニーズでは何年かにひとり、黒髪、軍服の似合う人物が出てくる。それはジャニー喜多川が意識していたのだろうか。ジャニー喜多川亡き後、あるいは戦争を知らない人たちが圧倒的に増えてきたいま、軍服の似合う少年や青年は今後もジャニーズに入るだろうか。もしかしたら松村北斗が最後の世代になるのではないか。

 そんなことも考えてしまうが、稔人気によってこの手のキャラの需要が高いことは立証されたわけで、今後もジャニーズから供給され続ける気もする。

“アフター稔さん”の出演作品は?

 さて。朝ドラに出演した俳優は間髪いれずに民放の番組に出ることが多い。例えば、『おかえりモネ』の清原果耶が火曜ドラマ『ファイトソング』に主演したり、相手役・坂口健太郎が火曜ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』に出たり、『おちょやん』の杉咲花が水曜ドラマ『恋です!ヤンキー君と白杖ガール』に主演したり、『スカーレット』のヒロイン(戸田恵梨香)の夫役・松下洸平が水曜ドラマ『東京タラレバ娘2020』に出たり。女性視聴者の多い水曜ドラマや火曜ドラマにシフトすることが多いのだ。

 他のドラマと比べて朝ドラは、全国区で、視聴率も圧倒的に高く認知度が上る。そのためマネージメント的にも続けて露出したいだろう。起用する側も朝ドラ人気にあやかりたいという思いがあるだろう。

2022.06.23(木)
文=木俣 冬