山野に咲く、可憐な花たち
「神代植物公園」では、「山野草園」というコーナーを設けているので、公園にいながら、まるで山歩きをしているような気分を味わうことができます。
山野草園を散策していると、木陰に地味ながら小さな花を咲かせているものがありました。
「フタリシズカですね。静御前の舞姿に例えられるような花で、日本各地で見ることができる身近な野草です。名前に合わず花穂が1本だったり、3本以上のものがあったりで、3人静、4人静の場合も。それを探してみるのも面白いですよ」
土を踏みしめながらさらに小道を進むと、緑色の野草が生い茂るなかでも、ちょっと容姿が異なるエビネが。
「山野草園でも華やかな花ですね。エビネは蘭の仲間になります。蘭というと胡蝶蘭のような華やかなもので、南国にしかないと思われがちですが、日本の屋外で気軽に見られるものもあるので、見つけたらちょっと贅沢な気分になるかもしれません」
山野に生え、枝先に1〜2個の白い花が垂れ下がって咲くホウチャクソウも発見。
「つぼみの時期は、同じように釣鐘状の白い花を咲かせるナルコユリやアマドコロと似ていますが、ホウチャクソウは茎が分岐しているところから見分けられます」
ほかにも、白くて星のような可愛い小花を咲かせているオオチゴユリや、同じく白くて優雅なガクウツギといった山野草の花も見つけることができました。
ウツギと名乗っていますが、どちらもアジサイの仲間なんだとか。アジサイのようにも見えますね。
「どの野草にも名前があり、それを知ると自然がくっきり見えてきて、親しみがわいてきますよね。フラワーデザインの業界でも、いま野草がもてはやされているんです。これまで見向きもされなかったような野草のお花にも注目が集まっているので、みなさんも先取り気分でぜひ探してみてください」
初夏の「神代植物公園」での花めぐりはいかがでしたか? バラの楽しみ方や野草の花の楽しみ方をご案内しました。目立たない花たちだって個性的な風情にあふれていることがわかります。なんとなく通り過ぎていた道ばたのお花も、ズームアップするとその美しさに気付くことができるはず。
佐藤俊輔(さとう しゅんすけ)
フラワーデザイナー。大手百貨店退社後、花の世界へ。2014年モナコ国際親善作品展国内選考会で特別賞を受賞。'17年「女性自身」(光文社)、’19年日本最大級の花材通販「はなどんやアソシエ」にて季節のアレンジメントを連載。’20年から、CREA WEBにて「今日、花を飾るなら。ブルームカレンダー」連載中。
●今回伺ったのは………
神代植物公園(じんだいしょくぶつこうえん)
2021年に、開園60周年を迎えた調布市にある植物公園。約4,800種類、10万本・株の樹木が植えられている。園内は、ばら園やつつじ園をはじめ、植物の種類ごとに30ブロックに分けられており、景色を眺めながら植物の知識を得ることができる。
所在地 東京都調布市深大寺元町5-31-10
電話番号 042-483-2300
開園時間 9:30~17:00(本園の最終入園は16:00)
定休日 月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/
2022.05.28(土)
文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美