『ゲゲゲの女房』でヒロインを務めた松下奈緒
『ゲゲゲの女房』でヒロインを務めた松下奈緒

 男性主人公で、兄はいたものの、ドラマには登場していない『マッサン』(2014年度下半期)、義兄がいた『てっぱん』(2010年度下半期)などというパターンもある。

 そして、朝ドラヒロインの兄と言えば、かつては「真面目で優しく聡明」で、ときどき「迷走・転落」「早死に」が定番だった。

 例えば、『ゲゲゲの女房』の場合、教員で、真面目で実直な跡取りの兄(大下源一郎)が登場するし、『おひさま』の2人の兄もほぼ前述の条件に当てはまっている。まず、長男(田中圭)は優秀で優しく正義感が強く、「常にきょうだいの手本であるべき」として自分を律して育ち、若くして戦死してしまう典型的な“朝ドラの兄”。次兄(永山絢斗)は少々ひねくれ者だが、優しく、妹思い。農学校に進学した後、幼い頃から好きだった飛行機への憧れで海軍飛行予科練習生に志願したり、何度も失敗しながら紆余曲折を経て、結局は医師になるという、”朝ドラの兄“の発展版、あるいは次男というポジションもあって、”朝ドラの弟”的部分もあった。

 

ときめく“正統派兄”たちの軌跡 千葉雄大、小出恵介…

『梅ちゃん先生』の場合は、ヒロイン・梅子(堀北真希)が「松竹梅の一番下・落ちこぼれ」キャラであることの対比として、優秀な姉・松子(ミムラ/現:美村里江)と兄・竹夫(小出恵介)が登場する。しかし、竹夫は医師を目指していたが、親が敷いたレールに乗る人生に疑問を抱き、退学、家出、起業と、ときに胡散臭い時期も経て、波乱万丈な人生を歩んでいく。

『おひさま』の長男と同様に人気が高かったのは、『わろてんか』の兄(千葉雄大)。帝国大学薬学科の学生で、優しく、学業優秀で、将来は家業を継いで、自身と同じぜんそく患者を救いたいと願っていたものの、若くして亡くなってしまう。しかし、死後、論文が注目され、家業の危機を救うきっかけになるというオマケつきだ。

 そんな中、少々異色なのは、『花子とアン』で、勉強嫌いで学校をやめた兄(賀来賢人)。はな(吉高由里子)の読み書きの才能を信じ、貧しい境遇ながらも、はなを女学校に通わせようと必死な父に反発し、はなに嫉妬心を抱いていたが、後にはなの息子や養子を可愛がるようになり、最終的に父とも和解を果たす。

2022.05.11(水)
文=田幸 和歌子