そんな暢子を乗せたバスを追いかけ、「暢子は行かさない。誰も東京には行かさない」と最初に引き留めたのはニーニーだった。そして舞台は7年後へ。
そこで視聴者が盛大にズッコケたのは、7年後のニーニもまた、頭に例のバンドを巻いていること。何より落胆したのは、働いていないこと。喧嘩とボクシングに明け暮れ、苦しい生活の中で高校に行かせてもらったのに、中退し、仕事はどれも長続きせず。お年寄りを突き飛ばした相手を殴りとばしたと思えば、それが暢子の就職先の社長の息子。さすがに責任を感じ、一瞬は仕事に就いたものの、すぐに無職に戻り、さらに一獲千金の投資話を持ち掛けられると、たちまちその気になり、家族を巻き込んでますます大変な状況に。
番組公式サイトでは、賢秀について「勉強は苦手、素行も悪いが心優しい家族思い。常に『比嘉家の長男』を自負し、家族のためさまざまな挑戦をするが、かえって迷惑をかけることが多い」と説明されている。確かに、悪いヤツではなく、心優しいのは確かだが、ダメ兄なのも確かだ。
SNSでは《算太といい、最近はダメ兄が多いな》《朝ドラには昔からずっとこういうダメなキャラがいるよね》といった指摘も多数見られるが、はたしてそうだろうか。
朝ドラの兄は「真面目で優しく聡明」がテッパン
長い歴史を振り返ると、そもそも朝ドラでは、下に妹や弟のいる「長子」ヒロインが多く、「兄」がいた作品は少なかった。
その理由は、戦争などで父不在となり、長子が父がわりになって家族を支えていく物語が多かったことや、空気を読まずに突っ走る「ヒロイン至上主義」の物語では、巻き込まれ型の弟や妹のほうが配置しやすかったことなどがあるだろう。
しかし、放送時間を変更した『ゲゲゲの女房』(2010年度上半期)以降、『ゲゲゲの女房』、『おひさま』(2011年度上半期)、『梅ちゃん先生』(2012年度上半期)、『純と愛』(2012年度下半期)『花子とアン』(2014年度上半期)、『わろてんか』(2017年度下半期)、『カムカムエヴリバディ』『ちむどんどん』と、兄がいる作品がやや増えている。
2022.05.11(水)
文=田幸 和歌子