ここ数年、リスニングスタイルがダウンロードやストリーミングへと変化している一方で、レコードの人気が世界的に高まってきている。

 アナログ独特のあたたかいふくよかな音の魅力はもちろん、ターンテーブルにレコードを乗せて、針を置くという所作もワクワク感を高めてくれる。

 ただ、レコード専門店に足を踏み入れるのは少しハードルが高いもの。だけど、最近はレコードだけなく、こだわりのコーヒーを淹れてくれたり、スパイスの効いたカレーを提供してくれたりする、楽しみがプラスオンなレコードショップが都内に増えてきているのだ。

 レコード初心者でも安心して足を運べる”レコードショップ兼〇〇”という、注目の5軒をご紹介。

 今回は下井草の「PHYSICAL STORE」に、5月に単独公演を控える今注目の8人組ユニット「ダウ90000」の蓮見 翔さんとお出かけ。

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フィジカルな繋がりを感じるための場所

 都心の喧騒から離れたどこか懐かしい雰囲気の下井草。そんな昭和の雰囲気を色濃くのこした住宅街に「PHYSICAL STORE」はある。

 レコード店「ORGANIC MUSIC」と、洋服や雑貨を扱う「PLANET BABY」が合わせて入っている「PHYSICAL STORE」。

 同店はDJとして25年以上のキャリアを持ち、国内外で活躍するChee Shimizuこと清水啓達さんと加奈子さん夫妻が2019年にオープンさせた。

 「10年くらい前から、オンラインでの販売はしていたんですが、直接お客さんと会って、ダイレクトに音楽を伝えたいと思ったんです。

 ネットでの販売もいいですが、実店舗だとその場で音楽を紹介して、聴いてもらうことができるので、フィジカルな繋がりができるような気がしています」

 フィジカルな交流の場を作りたいという思いを込めて「PHYSICAL STORE」と名付けた。直訳すると「実店舗」という意味で、多少のシャレもあるのだとか。

 ずらっと並ぶレコードは、ジャズや民族音楽、CD音源化されていないお宝など、通を唸らせる品揃え。

 なかでも、一部好事家以外にはあまり注目されていない、日本の伝統音楽や現代音楽の品揃えは国内でも有数で、店を訪れる音楽好きたちも少しずつ興味を示しているという。

 「DJとして海外に行く機会が多くて、そこで見つけた面白いレコードを売りはじめました。

 コロナ禍以降、海外に行くことも減ったので、日本の音楽に目を向けると、自由で独創的な作品がたくさんあって、ここ何年かでさらに探究するようになりましたね」

 店内では、レコードの購入だけでなく、お酒やコーヒー、ハーブティーなどを飲みながら音楽を楽しむことができる。

「ただのお店というよりも、聴いてもらう場にしたいと思っています。音楽に興味がなくても、ここでお茶を飲んだりお酒を飲んだりしながら、かかっている音楽に少しでも興味を持って耳を傾けてもらえたら嬉しいです」

2022.05.10(火)
文=渡里友子
写真=今井知佑