年齢制限の引き上げを検討する声もありますが、私は採点方法を変えることが、ジャンプだけでないスケートの魅力を伝えていくことにもつながり、低年齢化問題の一助となるのではないかと思っています。

 

「将来の子ども」か「今の競技」か…誰がその選択をしているのか

――「将来の子ども」か「今の競技」かという究極の選択は、現在の選手にまで続いている「重い決断」でしょうか。

村主 メダル射程圏内のトップクラスの子たちに対しては、昔と違って今はいろんなケアがあると思います。問題はその下にいるBランク、Cランクの子たちです。

 彼女たちはAチームに上がるために必死に練習しなくてはいけませんが、トップチームのような恵まれたサポートはありません。メンタルケア含め、資金面においても非常に厳しい立場に置かれているのが、トップ集団のすぐ下にいる将来有望な子たちだと思います。

――村主さんは振付師として将来のプロスケーターの育成にあたる中で、競技「以外」のケアも求められていると感じますか。

村主 こちらが全部教えないといけない部分は正直、多いです。生理のこともそうですし、食事管理や経済面の話も大事だと思っています。

「私は基本的には『食べちゃいけない』って絶対言いません」

――完全に振付師の範疇を超えていますよね。

村主 でないと、素質のある子も知識の差でダメになってしまうんです。

 中国やロシアは今も国からのサポートが手厚いですし、選手はスケートリンクと学校の往復だけで生活しているので、ある意味、誘惑がないんです。

 でもアメリカではジャリジャリするくらい砂糖の入ったお菓子が山のように売られているし、カレッジライフが始まれば友だち付き合いもしたくなる。面白いオンラインゲームがあったらつい徹夜したくもなりますよね。

――保護者のように、生徒たちの生活面もサポートするわけですね。

村主 といっても、私は基本的には「食べちゃいけない」って絶対言いません。食べていいからって。「運動するんだったら食べていいから。ただ、食べるものもお菓子とか甘いシュガーとか、例えば飲み物もジュースとかはやめてね」というぐらいしか言わないんです。

2022.03.06(日)
文=小泉なつみ