――「ジャンプ偏重」の功罪をどのように考えますか。
村主 配点によって技術向上、ジャンプレベルの引き上げがもたらされているのは事実です。ただこのままいくと「ジャンプの大会」みたいになってしまって、プログラムを踊ることで「自分のストーリーを伝える」という芸術性がなくなってしまうのではないかと危惧しています。
5年以上止まっていた生理が戻って、直面した“感覚”
――ジャンプの進化によって、特に女性選手の「ピークアウトの若年化」が誘発されているとも聞きます。過度なダイエットなどで心身を壊す選手も少なくないとか。
村主 女性の場合、小さく、軽く、起伏のない体型の方が高難度のジャンプをクリアしやすいため、低年齢化が進んでいます。
私は現役時代、5年くらい生理が止まっていました。心配した母から受診を勧められて婦人科にかかりましたが、ホルモン治療の副作用がひどく、競技どころではなくなってしまって。
そのとき、将来子どもを持ちたいかどうか今選ばなくちゃいけないんだと感じて、私は競技の道を選んだんです。
――重い決断をされていたんですね。
村主 生理不順を治すための服薬もできなかったので、子どもができなくても仕方がないと思ってスケートを続けていました。でもその後、鍼治療を取り入れたおかげか、3年かけてようやく生理が普通にくるようになりました。
――現役中、生理が戻ったということでしょうか。
村主 そうなんです。ただ今度は体型が丸みを帯びてきて、瞬発力が落ちるのを感じました。
――スポーツ選手としては、生理がないほうが成績が出やすいと。
村主 成績が出るか出ないかは人それぞれかと思いますが、大人になるにしたがって女性ホルモンが増え、瞬発系の動きに対応するのが難しくなってくるのは、女性の体の仕組みとして当然のこと。
女性としての機能をおろそかにしたままアスリートを続けていくことがその後の人生にどのような影響を及ぼすのか、そこは我々指導的立場にいる者からの啓蒙を含め、もっと周知されなくてはいけないと思います。
2022.03.06(日)
文=小泉なつみ