料理を「作らない・作れない」ことに罪悪感を持っている人に贈る、フードライター・白央篤司さんの金言&レシピ。

 どんなものであれ、作ろうと思ったそのこと自体が尊い。今晩はひと品、作ってみませんか?


トマトの旨みとナンプラーの塩気で味わうパスタ

 先日、スーパーでたまたまトマトが目に留まり、瞬間的に「ああ……食べたいな」という気持ちが湧きおこって、なんか嬉しかったんですね。

 まだまだ寒いけれど、体や味覚はもう南の方を向いているというか。トマトの赤に食指が動けば、春は遠からじというか。

 トマトなんて本当は夏野菜だから、季節を飛ばし過ぎもいいところだけど、あの酸味や青みを体が欲したということが嬉しかった。「そろそろ、こういうのもいいんじゃない?」と体に言われたような気がして。

 「うん、買おうかね」とひとり返事をしつつ、レジに運んだのでした。

 家に帰って、トマトでパスタ作り。このときのレシピをざっと書いてみます。まず最初に、パスタをゆでるお湯の用意。それから食材の準備へ。

 トマト(1人前で200gぐらい)はひと口大よりちょい大きめに切る。ニンニクひとかけを粗く刻んで、フライパンに油大さじ1をひき、弱めの中火にかける。ニンニクがしゅわしゅわと音を立ててきたら、トマトを加えて軽くソテー。

 好みのスパゲティ70~80g程度をパッケージの指示どおりにゆでる。3~4分ぐらいゆでたところで、おたま1杯半ぐらいのゆで汁をフライパンへ。ナンプラー小さじ1程度も加えて、沸かす。

 味つけはナンプラーの塩気とトマトの旨みだけ。湯切りしたスパゲティをフライパンに加えて、別にゆでておいたホウレン草適量を加えて、全体をしっかり和える。仕上げにコショウを少々で完成。

 余っていたクレソンも最後に散らしました。「パスタにナンプラー?」と思われるかもですが、旨みと塩気と食欲を誘う香りづけが同時にできるのがナンプラーのいいところ。スパゲッティにも私はよく使います。

 さて、いきなり話は変わってレトルトカレー。

 ハウス食品から出ている「選ばれし人気店」シリーズの「スリランカカリー」が私、けっこう好きなんですよ。福岡の「不思議香菜ツナパハ」監修の味。ココナッツミルクと辛さがしっかり感じられて、サラサラッとした仕上がり。

 これにあるものを“ちょい足し”すると、実においしい。

 サツマイモを加えて煮るとね、いいんだな。

 大手のレトルトにしてはこの「スリランカカリー」、かなり辛さが際立つほう。スパイス感しっかりの辛みにサツマイモの甘みがとてもよく合うんです。お手軽に楽しめるインド煮物、とでもいいますか。

 私はあらかじめサツマイモを蒸すかチンするかして、ホクホクの状態にしたものをひと口大に切って、カレーと煮合わせます。

 火にかけてフツフツとやさしく沸かし、5分ほど温めればOK。刻んだパクチーなんか加えると最高においしい。

 福岡市中央区大名2丁目にある「不思議香菜ツナパハ」さんは、以前に取材で訪ねました。鮮やかな辛さが忘れられません。あのおいしい刺激……いい辛さはツボを押されるような快さがありますね。

 辛いんだけど旨みやコクとのバランスがよくて、スプーンが止まらない。連食性があるとはこのことかと。

 店内も素敵だったな。

 またいつか、訪ねたいです。しかし、まだまだ旅行もままなりませんね。3回目のワクチン接種が早く進みますように。

 みなさんもどうか、ご自愛ください。

 それでは、また。

白央篤司(はくおう あつし)

「暮らしと食」がテーマのフードライター。著書に『にっぽんのおにぎり』 (理論社)、『自炊力』 (光文社新書)など。現在オレンジページ、メトロミニッツ、ハフポストなどで連載中。料理家としても活動、企業へのレシピ提供などを定期的に行う。人物撮影:内藤恵美
http://hakuoatsushi.hatenablog.com/

Column

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2022.02.12(土)
文・撮影=白央篤司