近年、韓国発のエンターテインメントの世界的な活躍のニュースは毎日のように目に入ってきます。7人組ボーイズグループBTSの国連でのスピーチやパフォーマンス、Netflixドラマ『イカゲーム』や『愛の不時着』の世界的ヒット。

 その韓国エンタメ産業の躍進は、実は韓国社会の変化と大きく結びついています。90年代後半、日本の大衆文化ファンの韓国の若者たちをルポし、現在もソウルに住み文春オンラインに韓国をめぐるニュースを執筆するノンフィクションライター・菅野朋子氏は、新著『韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか』(文藝春秋)で、その韓国エンタメの世界席巻に至るあらましと、いまなお残る前時代的な闇を、様々なエピソードを交えながら、わかりやすく解説しています。ここでは同書から、韓国エンタメ界における重要なピースについて抜粋、紹介します。(全2回の1回目/後編を読む)

◆◆◆

韓国エンタメ界の雄、CJグループとイ・ミギョン

 2010年代に入ると、映像に限らず、韓国のエンタメ産業を牽引する企業が生まれた。「CJ ENM」だ。

 CJ ENMは、財閥CJグループの企業。韓国のエンタメ産業の現在を語るのに、このCJグループは外せない存在だ。

 CJグループは、食品やそのサービス、生命工学、流通、エンタテインメントを四大事業としている。その中心企業である第一製糖(韓国語でチェイルジェダン。頭文字をとってCJとなった)は、もともと現代韓国を代表する巨大財閥サムスングループの企業だった。

 植民地時代にイ・ビョンチョル氏が設立したサムスンは小さな商社から身を起こし、朝鮮戦争後、製造業に関わるようになった。そのときつくられた最初の企業が、第一製糖だった。

長男が後継者とならなかったことは韓国では異例なこと

 同社は韓国で大成功を収め、現在も韓国国内の砂糖生産のシェアのおよそ5割を握っている。1995年に筆者が韓国留学していたころは、「砂糖の会社」の印象がまだ強かった。

2022.01.30(日)
文=菅野朋子