安室は自らの人生の転機を30歳だったと語っている。
〈 30代が、もう本当に素晴らしく楽しい10年間だったんです。いろんなことが自由にできて。だから、ここから先はこの最高の10年をもとに歩いていけると感じているんです。(『ViVi』2018年8月号)〉
奥田民生が30歳で「イージュー★ライダー」を書き下ろし「僕らの自由を」と歌ったのと同じように、安室奈美恵も、やはり30歳で「自由」と「自分らしさ」を手にしていた。
本書で繰り返し書いているように、平成とは「自分らしさ」の時代だった。自己犠牲が美徳とされた昭和の価値観が少しずつ解体され、それぞれ個人の主体性が獲得されていく30年だった。
そういう意味でも、安室奈美恵は「平成の歌姫」だった。
人生の荒波を超えていく
「CAN YOU CELEBRATE?」は結婚式の定番曲だ。もともとウェディングソングを意図して書き下ろされた曲でもある。しかし、こうして安室の歌手としてのキャリアを振り返った上で考えてみると、より深い意味を歌詞から読み解くことができるのではないかと筆者は考えている。
安室はこの曲について、こんな風に語っている。
〈 20代、30代、そして今。この歌は、歌う年齢によって、歌詞の重みも違って感じるし、ジーンとくる言葉もそのときどきで異なっていて。きっとこの先の40代、50代も、自分の成長や経験とともに、聴くたびに新しい発見のある曲じゃないかなと思う。(『andGIRL』2018年8月号)〉
歌詞には、こんな言葉がある。
〈 遠かった怖かったでも 時に素晴らしい
夜もあった 笑顔もあった どうしようもない風に吹かれて
生きてる今 これでもまだ 悪くはないよね〉
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2021.12.17(金)
文=柴 那典