小さい頃、我が家のすぐ近くに氷屋さんがあって、木製の小さな冷蔵庫に入れる塊の氷を毎日のように買っていました。夏のお楽しみは、店先で売られるかき氷。大きな氷を削る器械と赤、緑、黄色の蜜の瓶が並んでいて、氷をシャリシャリとかいてもらっている間、何色にしようかといつも迷ったものです。
かき氷は、夏の風物詩。暑さが厳しくなると、やはり食べたくなりますね。
京都には「宇治金時」など抹茶と小豆がおいしいかき氷のお店が何軒かありますが、他の街ではなかなか個性的なかき氷がなかった。そんな中で見つけたのが、神戸の『日本茶カフェ 一日(ひとひ)』のかき氷です。
日本茶カフェらしいかき氷が「焙じ茶」。スプーンですくって一口食べると、ほんのり香ばしい焙じ茶の香りが広がります。特上の焙じ茶を選び、濃く淹れて砂糖を加えた蜜を氷にかけ、上には甘く煮た小豆をトッピング。パラリと振られた焙じ茶の茶葉がアクセントです。見た目は地味ですが、毎日でも食べたくなる芳香とさわやかさ。一度食べたら、やみつきになるおいしさです。
右:まるで小さなギャラリーを思わせる入口
お店があるのは、神戸市東灘区。最寄り駅はJR神戸線摂津本山駅と阪急神戸線岡本駅。閑静な住宅街ですが、大学が3校ある学生街でもあり、小さな雑貨店やカフェ、スイーツやパンの店が点在しています。また、岡本駅から北にはすぐ六甲山系が迫り、登山姿の人々も多い。
そんな街に2005年6月オープンした『日本茶カフェ 一日』。店内は南北両側に大きな窓があって明るく、壁面や棚にいつも絵画や陶器、アート作品が展示されており、ギャラリー気分で寛げます。
中央のカウンターの上には鉄瓶が置かれ、店主・遠城靖さんが厳選した煎茶、玉露などを、お湯の温度や時間にこだわって三煎、ていねいに淹れて出されます。一煎、二煎、三煎と、それぞれの味わいや香りの変化を楽しめるのが大きな魅力。
お茶は、静岡、宇治、九州などの産地からの、「かなやみどり」「さやまかおり」「天竜」といった品種の定番の茶葉が10種類。時々に珍しい産地のものや飲み頃の茶葉も加わります。
お茶請けとしてのお菓子も、上生菓子やどらやきなどの和、パウンドケーキなどの洋、杏仁豆腐などのアジアンテイストと幅広く揃い、お茶との相性の新発見があります。
「三煎淹れて風味の変化を楽しむことができるのが日本茶の特徴です。日本茶を飲んで、ほっと寛いでもらえたら」と遠城さん。
2013.07.07(日)