染色工芸家でアーティストである柚木沙弥郎さんの作品を観ると心が躍る
立川に一昨年オープンした美術館「PLAY!」にて、染色家の柚木沙弥郎さんの展覧会が開催中。さっそく訪れたので、見どころをレポートします!
現在99歳の柚木沙弥郎さん。柳宗悦の「民藝」に出会った後、芹沢銈介に師事し染色家となりました。近年ではIDÉEや京都のACEホテルとのコラボなど世代を超えて注目を集めています。
造形は力強く、柚木さんの信念が貫き通った作品群です。人生をどう生きるか私たちを導いてくれるかのよう。
今回の展覧会のキュレーターを務める林綾野さんは展示に込めた思いを次のように語ります。
「展覧会のタイトルは、『life・LIFE展』は、暮らしと人生を現しています。柚木さんは、70年以上活躍を続ける工芸家。工芸家とはつまり、生活に寄り添う必需品をつくっているひとです。そんな工芸家の人生と生活を見つめる展示を心がけました」
70歳を過ぎて取り組んだ絵本
展示は主に3つのコーナーに分かれていて、ひとつめのコーナーは、70歳超えてからはじめた絵本の創作活動に関する展示。
絵本『そしたらそしたら』や『ぎったんこばったんこ』の原画には、水彩アクリルと型をとった染色の2種類があり、大人の感覚が子供時代にトリップして、心が開放されるような絵が展示されています。
興味深いのは、柚木家の自宅のキャビネットをそのままもってきたコーナー。
旅好きで動物好きの柚木さんの頭の中をのぞいているかのよう。
そして、圧巻なのは、最後の展示「布の森」です。
戦後は服やカーテンの布から始め、現在はアート作品となっている柚木さんの布の数々が森のように天井からつるされて、ゆらゆらと波打っているのです。
柚木さんは、自然からインスピレーションを掴んで自分のものにして凝縮して模様に落とし込んでいるのだそう。
「布が、あなたの記憶の奥底にかたりかけてくるような感覚を味わってほしいです」とは、先出の林綾野さんの弁。
2021.12.04(土)
写真=鈴木七絵
文=CREA編集部