一見、ただ芸人とアイドルのふたりが喋っているだけの番組に思える。しかし『キョコロヒー』がここまで人気になった理由は、ヒコロヒーと齊藤京子のトークが、今までにないものだったからではないだろうか。
たとえばバラエティのトーク番組というと、視聴者に「ここで笑うといいよ!」とちゃんと示すかのような、テンションが高めな出演者の笑いや、テロップが大きく出ることが特徴的だ。しかし『キョコロヒー』の場合、彼女たちは大げさすぎるリアクションを取らない。あくまで、身内で話すときのような低いテンションを維持する。
ふたりはしばしば「やる気はあるのにあまりやる気がないと思われることが私たちの共通点だ」と言う。齊藤はその可愛らしい外見からは想像できないほど、物怖じしない物言いをするアイドル。それに対して「いつかぶっ飛ばしたい」と言いつつも、話を拡げてオチをつけ、笑える話に持っていく芸人のヒコロヒー。
ふたりの親しみやすい話の流れが、バラエティの高いテンションを求めていない視聴者にも楽しめるようになっている。番組内でもよくLINEすると話すふたりのトークは、深夜に聞いていると妙に心地いい。
クラスで「なんで仲いいんだろう」と噂されるような二人組
ある時、番組でゲストはこう述べた。「キョコロヒーのふたりは令和の『下妻物語』だ」と。
『下妻物語』といえば、ロリータファッションに身を包んだ少女と、ヤンキーとして生きる少女が出会って、アンバランスな組み合わせながら友情を育む物語だ。たしかに言い得て妙だと思う。
ヒコロヒーは「国民的地元のツレ」と呼ばれ、今年のブレイクタレントとして挙げられる女性芸人。一方で齊藤は、日向坂46のメンバーとして写真集を出したり歌番組にも引っ張りだこの人気アイドル。そんな彼女たちだが、ふたりで一緒に喋っているのを見ると、クラスの隅で「なんであのふたり仲いいんだろう」「でも、妙に気が合ってるよね」「いつも放課後ふたりで何話してるんだろう」とでも噂されていそうなコンビだなと感じる。
2021.12.01(水)
文=三宅 香帆