「いつか何者かになりたい」という反骨心

 魔性のタラシの松田くんは「相手が欲しがってる言葉がわかる」特性によって誰かにつけ込んだり相手の執着でがんじがらめになったりした時の虚しさから、梅ちゃんはたまに感じてしまう性欲への疑問や「いつか何者かになりたい」と思ってマンガを描き始めた反骨心から、好きな人にとことん尽くしても、やることがすべて空回りしまった悲しさは檜山くんに反映されています。5人のセフレがいる桃江ちゃんは、承認欲求と性的好奇心と母性を極端に表現したイメージです。

 

──お気に入りのキャラクターや、描いていて楽しいキャラクターはいますか?

いつまちゃん みんな自分の子どものように思っていますけど、たとえば桃江ちゃんのセフレの活躍回では、桃江ちゃん視点で「◯◯君かっこいい~」と感情移入して描くことが多いので、私までドキドキしちゃってますし、松田くんの元カノの華ちゃんを描いている時は「華ちゃんやっぱり好きだな~」と思います。その時描いているキャラにいちばん感情移入して描くので、「いちばん好きなキャラ=その時描いている誰かの好きなキャラ」という感じですね。描いていて特に楽しいのはバリキャリで女性が好きな長女、楽観的で定職につかない長男、可愛くて賢い女装男子の次男で構成された栗山三姉妹です。尖った個性の人々が自然に互いを尊重しあってる様子を描くのが好きですね。

──これだけ登場人物が多いと、読者の人気も分かれますか?

いつまちゃん 人気投票などを行ったことはないですが、サイン会など好きなキャラ描きますよ~って時は桃ちゃんと松田くんがダントツで人気ですね。でも梅ちゃんも檜山も心ちゃんも桃ちゃんのセフレたちも満遍なくリクエストを受けます。ご自身の感情に近いキャラだったり、実際の好きな人に近いキャラだったり…読者の方それぞれにとって一番想いを託せるキャラクターを好きになっていただくパターンが多い印象ですね。

2021.11.06(土)
文=いつまちゃん