オリジナル連作「セフレちゃん」でバズり…

──プロットはどうやって作成したのですか?

いつまちゃん 最初は、内向的だけど仕事ができる檜山くんみたいな社員ばかりの会社に、外交的でちょっとアウェイなギャル(見た目は梅ちゃん)が入社して奮闘するお仕事マンガを考えていたんですけど、王道ラブコメは私全然面白くできなくて。それなら、当時Twitterで人気だった「セフレちゃん」みたいな子を主人公にして、仕事に恋に悩みもがく話がいいんじゃないかと大森桃江ちゃんを考えました。

 


──「セフレちゃん」というのは?

いつまちゃん 私が描いていたオリジナルキャラクターです。もともと私は自分の失恋をネタにTwitterでエッセイマンガを描いていたんですけど、初めてのオリジナル連作「セフレちゃん」でバズってフォロワー数が一気に伸びたんです。なので編集部もそのテイストを期待してましたし、健気に恋をしていたはずなのに、なぜか都合のいいセフレになってしまう「セフレちゃん」みたいな桃江ちゃんがスタジオデルタで働くストーリーにすれば私の良さが活きると思ったんです。

モデルは生きてきた中で味わった様々な感情

 でも描き始めたら、「働いても働いても薄給で、好きな人にはふり向いてもらえない」という、すごく暗い話になってしまって…。それで今度は、桃江ちゃんのほかにも、桃江ちゃんと同じくらい個性豊かなメンバーを集めて群像劇にしたらいいんじゃないかと思って、会社帰りにマンガ喫茶に泊まって徹夜でプロットを描きました。その時急に何かが降りてきて(笑)。気がついたらバランスよく5人のキャラができあがっていました。

──5人がそれぞれ性をこじらせているという設定にされたのはなぜですか?

いつまちゃん 5人のモデルは今まで生きてきた中で味わった様々な感情ですね。

 例えば林くんの偏った思想は、第二次性徴期に貪るように読み、共に育った掲示板「2ちゃんねる」の様々な住人たちから着想を得てます。「女は付き合う前に一度安いチェーン店に連れていって(金銭目的じゃないか)反応を見ろ」みたいな書き込みが一時期議論の的になってましたが、ネット上のイメージだけで膨らんだ自分の経験不足による偏見って結構生きてて損するんですよね。これから仲良くなりたい人に対して試し行動して嫌われたり。みんな本当は純粋で傷つきたくないだけの良い奴なのにな…という歯痒い気持ちから生まれたのが林くんです。

2021.11.06(土)
文=いつまちゃん