つまり、単に既存曲をコピーするのではなく、能動的にパフォーマンスを創っていく能力も評価対象となる。そこで目指されているのは、プロダクション主導の“ファクトリー(大量生産型)アイドル”ではなく、パフォーマーたちの能動性・自律性を重視するK-POPの“ガールズグループ”だからだ。  

 コンビネーションミッションにおいて勝利したのは、そうした主体性を発揮した3チームだ。

 

「傷ついた少女の復讐物語」を率いた日本人メンバー

 まず3人グループにおいて圧倒的な力を見せつけたのは、ヴォーカルポジションのITZY「Mafia In the morning」チームだった。ここでリーダーとキリングパートを務めたのは、JYPエンターテインメントの元練習生で、ITZYのメンバー候補でもあった坂本舞白だ。NiziUのリーダー・マコからも慕われていたという彼女は、自分に訪れるかもしれなかった未来の楽曲をあえて選んだ。

 そのコンセプトは、「悪い男に出会って傷ついた3人の少女の復讐物語」。もともとのガールクラッシュをさらに強めたその内容は、3人の挑発的な表情の調整も含め完璧に近いものだった。この成果を導いたのは、やはりリーダーを務めた坂本によるところが大きい。


 6人グループで勝者となったのは、イ・ソニ「縁(Fate)」をパフォーマンスしたダンスポジションのチームだ。

 この曲は、2005年に公開の李氏朝鮮時代を描いた大ヒット映画『王の男』のテーマソングだ。まだK-POPという言葉がなかった時代に、朝鮮の伝統楽器を取り入れたひとむかし前の歌謡曲だ。そうした“古臭い曲”だからこそ、能力の高い参加者たちがどう解釈するかが見どころだった。

 6人はアイディアを出し合い、原曲のテーマ「縁(Fate)」を自分たちの関係に置き換えて表現した。コンセプトは「約束して、この瞬間が終わってもまた会える日」。

 指切りをしたり、手をつないで離れたり、あるいは手を伸ばしてお互いを求めたり──それは全員がデビューすることはないだろう未来を踏まえての表現だ。バレエシューズを履き、ほぼモダンバレエと言えるその振り付けは、リーダーを務めた四川音楽大学出身のシェン・シャオティンによるものだと思われる。

2021.10.08(金)
文=松谷創一郎