漫画家・久世岳さんの新作『ニラメッコ』(白泉社)は、若手お笑い芸人が、もがき、苦しみ、ぶつかりながら夢を追い続ける姿を描いた青春グラフィティだ。累計150万部のヒット作で、TVアニメ放送中の『うらみちお兄さん』(一迅社)でも、久世さんは“大人の闇”をユーモアたっぷりに描いている。なぜ「笑い」を描き続けるのか? その理由を聞いてみた。(全2回の1回目/#2に続く)
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坂元裕二の作品のおしゃれさに憧れる
──『ニラメッコ』には、「お笑い第7世代」のような、今どきの若手芸人が登場しますね。どなたかモデルがいるのでしょうか。
久世岳(以下、久世) 特定の誰かをモデルにしたわけではありませんが、いろいろな芸人さんのインタビュー番組や舞台裏は参考にさせてもらいました。小学生の頃からお笑いが好きだったので、自分のなかの「お笑い芸人」のイメージで描いています。
ストーリー構成は、「話数をまたいで1話につながる」というドラマでよく見るやり方を真似しました。最近だと坂元裕二さんの作品が結構好きで、ああいうおしゃれさに憧れています。
──お笑いにハマったきっかけは?
久世 関西出身なのでお笑いは常に身近にありましたが、高校生の時にジャルジャルさんを見て「お笑い沼」にハマりました。いま注目しているのは、金属バットさんです。「面白い」と言うのが失礼なくらい天才的に面白いのに、自分たちについてはあまり語らないところもクールでいいなと思います。
私的な感覚ですが、人を泣かせるより怒らせるより、笑わせることがいちばん難しいと思っています。だからこそ、日々人を笑わせることに奮闘しているお笑い芸人の方たちを心から尊敬しています。
実はストイックな「笑い」を生み出す作業
──「お笑い」そのものではなく、「お笑い芸人」をモチーフにしたのは、芸人さんへのリスペクトを描きたかったからですか?
久世 「お笑い」を扱った漫画というと、コメディやギャグを思い浮かべる方が多いと思いますが、「笑い」を生み出すまでの作業は実はすごくストイックで、ある種「笑い」とは対極にあります。
2021.08.20(金)
取材・構成=相澤洋美
漫画=久世 岳