お笑い芸人のみなさんは、舞台の上では笑っていますが、実際にはすごく苦労しながらコントや漫才のネタをつくっていると思います。「人を笑わせる」って、実は苦しいことの方が多いのではないかと考えたら、どうしてもそこに着目して描かずにはいられませんでした。
人を笑わせたいという人間の思考や心の内側を描くのはすごく難しいので、自分にとっても大きなチャレンジですが……。
──具体的にどのような部分が「難しい」ですか?
久世 読者が期待する「笑い」の部分と、お笑い芸人が笑いを生み出すまでの苦しいストイックな部分をどう調理していくかというバランスがすごく難しいです。
でも、『ニラメッコ』で伝えたいのは、「笑いを生み出すのって、こんなに大変なんだぞ」というメッセージではありません。むしろ、「こんなふうにつくられているんだ」と、お笑いやお笑い芸人に興味を持って、実際のライブや舞台に足を運ぶ人が増えたらいいなという期待のほうが大きいです。ただ、コロナ禍で「もっと劇場に足を運んでください」と言えないのはもどかしいですね。
担当編集の捨て身のネタ提供
──「お笑い」の部分に関しては、担当編集さんも捨て身でネタを提供してくれるそうですね。
久世 「お笑い芸人」を扱っている以上、読者は面白いネタにも期待していると思うんですが、面白いことが何も浮かばない時もあります。そんな時に担当編集さんが「参考になれば」と、昔つきあっていた彼女との下ネタや捨て身のエピソードを送ってくださることがあって。とてもありがたいんですが、ヘビーすぎて使えないんです(笑)。でも、自分では体験できない貴重な情報なので、今後も期待はしています。
──貴重なネタ提供者ですね(笑)。『ニラメッコ』では、舞台裏で芸人が「そろそろ売れたいなぁ」と本音をもらすシーンなど、実際に見てきたかのようなリアルな場面も描かれていますが、こちらは実際に取材されたのですか?
2021.08.20(金)
取材・構成=相澤洋美
漫画=久世 岳