田原 納戸にいろんなトロフィーがしまってありました。日本レコード大賞とか。そういうのを見つけると「なんなんだろう?」と気になりましたけど、やっぱりテレビにバーンと父の姿が流れるのが一番インパクトがありましたね。 

——家のなか以外で、ご自身が他の家の子供とは違う環境にいることを気づくきっかけになったものはありましたか? 

田原 家が大きすぎるなと感じたことかな。私、小学校までは公立で、校庭を駆け回っているめちゃめちゃ普通のガキンチョだったんですよ。友達もいっぱいいて、いろんな子のおうちに遊びに行っていて。でも、遊んで家に帰ってくると「あれ? うちって大きいな。なんか変だな」と思っていましたね。 

——「田原俊彦の娘だ」みたいな視線も感じることなく。 

田原 田原俊彦の娘っていうふうに理解されてはいたと思うんです。だけど、誰も色眼鏡で私を見なかったし、私自身も変に意識をすることもなかったので、そういう視線を感じたことも、妙な空気が漂うなんてこともなかったです。 

——ジェネレーションの差もありそうですけどね。 

田原 そうかもしれないです。仲良しの子のおうちに遊びに行くと、その子のお母さんに「可南子ちゃんのパパは本当にかっこよかったのよ~」って言われることがあって。でも、「ああ、そうなんだ。うれしいな」くらいの受け取り方でした。とにかく深く考えてなかったです。 

 

周りのお父さんと比べると「違うな」と感じたこと

——やはり、“周りのお父さん”と比べると違うなと思うことはありましたか? 

田原 幼稚園の時に、父の日参観があって父が来てくれたんです。クラスの子たちがそれぞれのお父さんに抱っこされている集合写真を撮ったんですけど、いまそれを見ると「あ、パパってカッコよかったんだな」とは思いますね。 

——いまのお話を聞くと、お父様は幼稚園や学校の行事には積極的に参加してくれたようですね。 

田原 運動会は来てくれました。ちっちゃいビデオカメラを回して一生懸命撮っていました。 

2021.07.31(土)
文=平田裕介
撮影=橋本篤/文藝春秋