和山 高いテンションのギャグを描かないということと、キャラクターの所作や背景などは細かく描くことを意識してます。コメディなので悪い人間は描かないようにしてますが、良い人ばかりでもウソっぽくなるので、そのぶん生徒の持ち物や、通学で使う駅、コンビニなどの背景や小物は実際に写真を撮ってリアルに描くことで、現実と虚構の乖離を埋めるようにしてます。また、小林先生がカロリーメイトをよく食べていたりなど、ズルいやり方ですが固有名詞を出すことで「こういう人、実際にいるかも」とイメージしやすいかなと思っています。

 あとは、漫画を描いている時は、BGMとしてドラマを流していることが多いので、ドラマで流れてくる映像を、キャラクターの動きの参考にしています。映像を意識することで、人間の細かい動きなども、より自然に描けていると思います。

 

以前は深夜のファミレスで

――1巻の1話で「気をつけてお帰りくださいませ」と言う星先生に対して、生徒が「敬いすぎ」と返すシーンや、生徒から「無印良品」と呼ばれていたことがあると話す星先生に、「おしゃれ!ずるい!じゃあ俺、高島屋!!」と返す小林先生のシーンなど、キャラクターのセリフが秀逸です。こうしたセリフは、どうやって考えているのですか。

和山 セリフは、じわじわとしたおもしろさが伝わるように考えています。最初にプロットから考えるのですが、それはセリフだけで書き起こし、そのあとでネームを組み立てています。セリフは、声に出してそのままスッと入ってくるかという音の響きや、会話のテンポ、説明しすぎていないかなどを何度も検証するので、すごく時間がかかります。

――一番苦しい作業は。

和山 一番苦手なのはネームです。セリフからネームを組み立てるのが一番難しい。キャラクターやストーリー、絵柄は読者にも好みがあるので、開き直って自分の好き勝手にしているのですが、ネームは「いかに読者にとってストレスのない画面がつくれるか」を一番に意識しています。ぱっと見た時に読みやすいものになっているか、セリフや絵がごちゃごちゃしていないか、吹き出しの配置で「ここの会話はどういうテンポで読んでもらえるか」など、基本的なことだからこそ画面作りは一番重要視して一番頭を使うところなので、いつもここで苦労しています。

2021.07.30(金)
取材・構成:相澤洋美
漫画=和山やま