「皇室の歴史は『危機』と『今どきの問題』の連続でした。長く続いてきた伝統を慌てて変えると大体ろくなことになりませんので、落ち着いて静かに見守ることが必要です」

 安定的な皇位継承をめぐる問題や、いまだに決着しない眞子さまと小室圭さんの結婚問題など喫緊の課題が山積し、日本の皇室が揺れている。

 そんな中、政府は2021年3月から、皇室にまつわる有識者を集めた会議を開催している。これまでに櫻井よし子氏や所功氏などが招かれ、6月7日に行われた6回目の有識者会議には小説家の綿矢りさ氏、女優の半井小絵氏、そしてマンガ家の里中満智子氏が出席した。

 里中氏は持統天皇の生涯を描く「天上の虹」(講談社)や、2度天皇に即位した孝謙・称徳天皇が主人公の「女帝の手記」(読売新聞社)などの代表作がある。日本の皇室がたどってきた古代から現代までの歩みを描き続ける里中氏は、現代の皇室をどう見つめているのだろうか。

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 日本の皇室の伝統が危機に瀕しているのは間違いありません。先日私が呼んでいただいた有識者会議でも、女性天皇・女系天皇の可能性、後継者の安定的な確保、女性皇族が婚姻で皇籍を離れたあとの立場などが大きなテーマでした。

 私はマンガ家で、歴史の専門家でも法律の専門家でもありませんが、女性天皇を含む皇室の歴史について調べる中で、日本人にとっての皇室の意味やその時代ごとの人間が感じることについてずっと考えてきたので、それで呼んでいただいたのかなと思っています。

姉の子供に死を命じる

 ただ、今は皇室の危機と言いましたが、実は皇室の歴史は「危機」の連続なんです(笑)。

 たとえば私が描いた「天上の虹」の主人公は西暦690年から697年まで在位した持統天皇ですが、彼女は天智天皇の娘として生まれ、天武天皇の皇后の立場を経て、40代の半ばで天皇に即位しています。彼女が史上3人目の女性天皇になったのも、皇位継承者が次々と亡くなる"危機"が原因でした。

2021.07.21(水)
文=里中 満智子