興味あることは沢山あるけど、「To Do List」じゃ重すぎる、スローなウィークエンドにしてほしい。そんなあなたのために、ゆるーい週末の過ごし方ガイドをCREA編集部が5つピックアップしてみました。

 もちろん、今週末は部屋でゆっくり寝て過ごしちゃう、なんてのもOK。だって、週末はまた来週もやってくるんだから。

 今週の「週末何しよう?」は引き続き特別編。緊急事態宣言が続き出かけることもままならない今、せっかくだから漫画でもゆっくり読んでみませんか?


①とってもかわいい「バクちゃん」が主人公のディアスポラ漫画

 主人公の「バクちゃん」(これが名前)はバク星出身の男の子。本来は夢に溢れた星だったバク星ですが、今では花も土も夢を見なくなってしまい、バクたちにとって大切な「夢」が枯渇してしまっています。

 そんな事情から「バクちゃん」は永住の地を求め地球へ、日本の東京へやってくることになりました。

 とってもかわいくて健気なバクちゃんは慣れない環境に戸惑いながらも、やさしい人、きびしい人、いろいろな人と出会いながら安らげる場所を探しています。そう、これは故郷を追われたディアスポラの物語、決して遠い世界のお話ではないのです。

「すこし・ふしぎ」と「すこし・リアル」が補強し合ったような物語。作者の増村十七さんは『バクちゃん』の雰囲気をそう語ります。確かに、ちょっとバクちゃんがかわいらしすぎるものの、これは居場所を探している私たちそのもののよう。はじめての景色、はじめての人、はじめての文化に出会い、時にシビアな局面にハッとしたり、ちょっとしたやさしさに触れてホッコリしたり。バクちゃんの生きる姿はいつも一生懸命で、見守りたくなります。

 2020年6月現在、日本に住んでいる外国人は288万人。みんながバクちゃんと同じように自分の居場所を探しているかもしれないし、いろいろな経験を経て見つけているかもしれない。そして、私たちも大なり小なり毎日の日々の中で必死に“自分”の居場所を探しているはずです。

『バクちゃん』はそんな精一杯な人たちを繋ぐ紐帯となるやさしい漫画。この本を読めば、きっと自分にも、周りにもやさしさのかけらを振りまくことができるはずですよ。

『バクちゃん』

増村十七著
ビームコミックス 814円

②地方出身者は読むべき『スキップとローファー』

 こちらもどうにも応援したくなる高校1年生岩倉美津未(みつみ)が主人公。

 石川県の過疎地育ちから高校入学を機に上京した彼女は、まさに天然。勉強はできるけどちょっとズレてる「みつみちゃん」もバクちゃんと同じように、東京や都会の高校生の中にポチャンと飛び込み、いろんな波紋を起こしていきます。「不協和音スレスレのスクールライフ・コメディ」とはよく言ったもの。みつみだけでなく、クラスメイトもそれぞれが個性的で、一人ひとりとの交流もクッキリと鮮やかに描かれています。胸が痛くなるような、微笑ましくなるような、思わず頷いてしまうような……。青春時代を思い出して思わず目頭が熱くなってしまいます。

 思えば、僕も大学入学で上京し、東京という分厚い壁にぶち当たった一人。みつみは初めてのカラオケで恥ずかしい思いをしますが、僕もバーミヤンが分からず(入学直後サークルの先輩に「バーミヤン行くぞ」と言われ「バーミヤンって何屋何ですか?」と聞いたら「バーミヤンはバーミヤンだよ」と言われた事件)、泣きながら家に帰ったことが思い出されます。あの時村重さんがいてくれたら……。

 みつみが起こす波紋は徐々に広がって、そして美しい水面へと馴染んでいく。そんな爽やかな青春群像物語。この輪の中に入りたい! って思うこと間違いなしです。

『スキップとローファー』

高松美咲著
アフタヌーンKC 726円

2021.06.10(木)
文=CREA編集部