試行錯誤を重ねた自分らしいスタイル
――ご自身にとって心地よいメイクやファッション、七海さんなりの自分らしいスタイルを確立するために、退団してからの2年で何か変わったことは?
この2年、変えようと思って変えたことはないんですが、強いていうならば、“肌”を大事にするようになったかな。在団中は本当に肌に無頓着で(笑)。退団してからようやくスキンケアをちゃんとするようになりました。
メイクも、仕事によってはがっつりメイクのときもありますが、抜け感のあるナチュラルメイクを意識するようになりました。
「今日はこういう服だからこんな感じのメイクにしよう」と自分で考えてメイクをするのがわりと好きなので、これからも自分なりに試行錯誤を重ねていきたいと思っています。
ファッションもこの2年で、「パリッ」「キリッ」という少し強い印象の服よりも、ちょっとふわっとした柔らかい印象のファッションを選ぶようになったのかも。
今日の撮影で着たお洋服もすごく好きです! ゆるいけど、なんだかカッコいい、ちゃんと締めるところは締めるみたいな。
だからそうですね、“抜け感のあるカッコよさ”みたいなのを目指していけたらな、とは思います。
それにしても美弥ちゃん(美弥るりかさん)は、やっぱりポージングとかとっても上手だなって撮影の様子を見ていました、ちらちらって(笑)。
美弥ちゃんはすごくファッションが好きだから、色々いつも研究しているんだろうなぁ。
……話が飛んでしまいましたが(笑)、まとめると、『基本は変わらなくても変わっていっている部分がある。それがいまの私のスタイル』です!
限られた場面でいかに密に濃く表現できるか
――舞台でも声優のお仕事でも、女役も男役もこなされていますが、ご自身ではどんなふうにスイッチを切り替えているのでしょうか?
確かに舞台でも声の仕事でも、男役も女役も、性別どっちだろ? みたいな役もやらせてもらっていますが、性格や生い立ちからくる振る舞い、話し方など、あまり性別を意識せず、“その人物の役”として演じている気がします。
昔はすごく細かく考えていたんですが、どんなに考えても、結局、見えている部分で表現しなきゃ意味がないと思うようになって。
つまり、自分が出ている場面と台詞で表現するしかないので、そこでいかに、密に濃く出せるかを考えるようになりました。
――そんなふうに考え方が変わったきっかけは、何だったんでしょうか?
もしかしたら(宝塚時代の)組替えだったのかも。お芝居の雰囲気も宙組と星組とで違ったので、そこから少し、自分の中の考え方を変えた部分があったような気がします。
でも、当たり前ですが宝塚以外の舞台に立つと、「はじめまして」のカンパニーばかりなんですよ。初めてだからこそ、そこで培われ、生まれるものがありますよね。
組が変わるというのは、その当時、会社を変えて新しい世界に飛び込むくらい大きな出来事だと思っていたんですが、今思うと、“部署異動”という感じだったのかもしれません。
だけど、私にとっては考え方が変わるほど大きな出来事でした。
――宝塚歌劇団退団後、七海さんが今の活動やスタイルに至るまで、覚悟や葛藤などはありましたか?
在団中もそうだったのですが、卒業してからは特に、何をするにも、“覚悟を決める”ということの大切さを感じます。
たとえば、初めての声優のお仕事、初めてのアーティストとしての活動や舞台などで「できないかもしれない」と思うと、本当にできなくて。でも「絶対にやるぞ」と思うと、意外にできたりする。本気で覚悟を決めてやろうと思えばなんとかなるのだと、この2年間で学びました。
そして、エンジンがかかるまでに時間がかかるタイプなので、毎日何かをコツコツ頑張りたいなと思っています。継続して努力することは、ちょっと苦手だったんですが、いざというときにすぐに力を発揮できるようにね。
2021.06.17(木)
Text=Kyoko Murahana
Photographs=Takeshi Takagi(SIGNO)
Hair & make-up=Ikuko Shindo(TRON)
Styling=Yumeno Ogawa