これをオフィス内のありとあらゆるPCで大音量で再生すれば、耳障りな打鍵音もその中に埋もれて聞こえなくなるというわけです。ヤケクソ? いえいえ、そんなことはありません。もっとも、懸案だった当事者のタイピング音は目立たなくなっても、職場環境はむしろ悪化するかもしれません(関係ありませんが、そうした環境でタイピング音の発生源である本人が平気かどうかは、違った意味で興味のあるところです)。

【力業】当事者をほかのスタッフから隔離する

 さて、ここからは言うなれば「強行策」です。当事者が発するタイピング音がどうやっても低減できないとなると、当事者をほかのスタッフから遠ざけてしまう方法が考えられます。例えばテレワークで周囲の視線をシャットアウトするための室内用プライバシーテントを使えば、タイピング音の発生源である当事者ごと、周囲から隔離することができます。本人にとっては、テレビ会議なども気兼ねなく行えるようになるメリットもあります。

 もっともオフィスでこうした製品を使って当事者だけを露骨に隔離するとなると、労基上の別のトラブルにつながりかねません。どちらかというとオフィスではなく家庭内で、テレワークでのタイピング音に家族が悩まされているケースに限定されそうです。また元来は視線を遮るのが目的の製品で、音への効果は未知数です。値は張りますが、防音にフォーカスした「だんぼっち」などの製品を検討したほうがよいかもしれません。

【現状ではベスト?】当事者をオフィスに出社させない

 ここまで多種多様な方法を紹介してきましたが、現時点でもっとも効果があるのは、テレワークを全面導入し、タイピング音が騒々しい人を出社させないことかもしれません。コロナ禍の現在なら導入に不自然さはありませんし、「実はあなたのキータイプ音の騒々しさが社内で問題になっていて……」と当事者に伝える必要もありません。当事者だけが集中的にテレワークのシフトに組み込まれる違和感を、どうなくすかだけです。

2021.06.06(日)
文=山口真弘