著者は韓国でも日本でもベストセラーになった『死にたいけどトッポッキは食べたい』の印象的なイラストを担当。自身も優れたエッセイの書き手で、本書はその第一著作の邦訳。憂鬱と無気力がピークに達していた著者の20代半ばから後半にかけての日々の記録を編集し直し、似たような精神状態で苦しんでいる人にそっと寄り添うようなエッセイに仕上げた。
「韓国の文芸作品は、小説でもエッセイでも、ただ『おもしろかった』だけでは終わらず、社会や自分の置かれた状況について考えさせられる点が魅力だと感じています。本書もそうで、特に外でポジティブに、アクティブに過ごすことが良いとされる風潮への目線に共感しました。家にずっといる人を『ウチ族』と呼び、それは恥じることでもなんでもない、自分にとって良ければ構わないというスタンスをしっかりとっているところにとても惹かれます。私も著者と同じ『ウチ族』なので(笑)」(担当編集者の大渕薫子さん)
現在の主な読者層は10代から30代の若い女性。
「読者はがきで寄せられた感想で、複数の方が『お守りにしたい本』と表現していたのが印象的でした。紙の本を出すことの意味を考えてしまう時代ですが、悩んだときに開くと少し気持ちが楽になる、手元に置きたい本にできたのかなと感じています」(大渕さん)
2020年6月発売。初版5800部。現在11刷8万部
2021.04.24(土)
週刊文春 2021年4月15日号