「これで、いつオープンするの?」「いける感じする」
「おいしくさせるちょっとしたコツがあって、マイブームのような感じで作っては、自宅に来る人にふるまっていました。依子、日向と鍋パーティーをした3月19日もそうでした。すると、依子が『いつ飲んでもおいしい。これで、いつオープンするの』って言うんです。『えっ、(ステイホームで)人のいない状況でやれると思うの? (近くの)同志社の学生もいないし』と返したのですけど…」(磯石さん)
それでも、清水さんは「いや、いける感じする」と背中を押し続けた。
「それだけ味が良かったんです。砂糖を使っていないのに、甘味があって、クリーミーで、濃厚で…。なので、『不安ばかりの日々だけど、私たちらしくハッピーなことをしようよ』と勧めたんです」
2人の1学年後輩で、7年間、アパレル小売業の会社に勤務してきた阪本さんも「できるんじゃないですか。そんなに手間がかかることではなさそうやし」と追随した。
390円だから、お店の名前は「サンキューバナナ」
3人は、すぐにパソコンを開いてエクセルで収支を計算。状況を考えると、民家を借りたオフィスは道路に面していて、そこのカウンターを売り場にすればいい。バナナ、ミルクの原材料を仕入れ、あとは手元にある家庭用のミキサー、冷蔵庫でやっていけば、「1日、10杯~20杯ぐらいの売り上げでやっていけるのかも」で合意した。磯石さんは、他店の設定価格を参考に「1杯500円」と思ったが、清水さんが「毎日飲んでもらえるジュースにしたいから390円でどう? 390円だから、名前はサンキューバナナで」と提案。その場で価格、商品名が決まった。
清水さんは、翌日から開店に向けて精力的に動いた。「保健所に届けを出したり、いろんな手続きをしました。私は前職からデザインの仕事をやってきたので、バナナの形を100本以上描いて、そのうちの1本をロゴに決めました。あとは、入手したバナナを家の中でどの位置に置いておけば、熟成度が高くなるかも研究しました。裕子が留守の間にカーテンレールの上、床、窓際などで試したのですが、カーテンレールの上が最も傷まずに熟成すると分かりました(笑)」
2021.04.06(火)
文=「文春オンライン」編集部