カニ、エビ……だけじゃない、次の注目食材は?
さて、福井の旨いものといえば、きっと誰もが真っ先に思い浮かべるのは「越前がに」。例年11月6日に解禁され、その贅沢な味わいは、やっぱり冬の味覚の王様です。
カニの脚をガシっとつかんで、あっという間に解体していく福井県民の手さばきは、とても鮮やか。「さすがご当地!」と脱帽です。
ちなみにカニにつけられているタグ。これを全国で初めて取り入れたのが福井県。現在では、各産地が採用していますが、黄色いタグは「福井産」の証です。
そして、福井県ならではのカニ体験といえば、「ズボガニ」。脱皮直後のズワイガニのことで、身に水分を多く含み、殻から身が「ズボッ」と抜けることから、この名で呼ばれるそう(ちなみに一般的には「水ガニ」と呼ばれています)。
脱皮したてで殻がやわらかく、取り扱いが難しいため、県外に出回ることが少ないという「ズボガニ」。身からあふれ出る旨みが格別です。なお、味わえるのは、例年2月下旬から3月下旬までのわずかな期間。この時期に福井に行く人は、必食です。
また、春(4~6月)、秋(9~10月)に旬を迎えるのが甘エビ。海底がきれいな若狭湾の甘エビは、ねっとりとした旨みが凝縮しているのが特徴です。
さらに、もしお店で見かけたらぜひ食べてみたいのが「ガサエビ」や「オニエビ」。漁獲量が少ないことから、幻とされることもありますが、福井では古くから人々に愛されている食材。ぷりっとした身に、とろりとした甘みが詰まっていて、福井の地酒と最高の相性です。
そして、北陸といえば、忘れてはいけないのが、新鮮なイカ。透き通ったイカのお刺身に、誰もが感激すること間違いなし。
4~6月に盛漁期となるスルメイカ、6~9月のケンサキイカ、そして10月からのホタルイカなど、旬の旨みを存分に堪能したい!
カニ、エビ、イカ、さらに岩ガキ、ウニなど、海の幸で名高い福井ですが、次なるブランド食材として、注目を集めているのが、ラムサール条約指定湿地にもなっている三方(みかた)湖の魚。
若狭湾国定公園となっている豊かな自然に恵まれた三方湖では、古くから伝統的な方法によるウナギ、コイ、フナなどの漁が行われてきました。
水面を竹竿でたたく「たたき網漁」、木々の枝葉を用いる「柴漬け漁」、竹筒を使った「ウナギ筒漁」など、魚を獲り過ぎないサステナブルな漁法として、近年では再評価され、現在もその伝統を受け継ぐ漁師さんたちが活動しています。
そこで、その漁法の守り継いでいくことと、三方湖で獲れる魚のおいしさを伝えていこうというプロジェクトが立ち上がり、さまざまな試みも始まっています。
「昔は家庭でも、フナやコイをよく食べていました」と語るのは、鳥浜漁業協同組合の田辺喜代春組合長。
汽水湖であるからか、三方湖のフナやコイは臭みがまったくないといい、「あらい」や「煮つけ」などにはせず、刺身で味わうことが多いのだとか。とりわけ、冬のフナの旨さはたまらないといいます。
この日、用意されたコイの刺身・煮つけやフナバーガーは、確かに臭みはまったくなく、言われなければ、「このおいしい魚、なに?」と聞いてしまいそう。こんな新しい食体験も、これからの福井では待っているのです。
世界が賞賛するレストランや食材、包丁から、未体験の伝統的な食文化まで、福井県の食には、今後ますます注目が集まりそうです。
◆ご紹介したお店の情報
RICE BAR CRAFT SAKE LABO
https://ricebar.jp/food/
2021.04.14(水)
文・構成=矢野詔次郎
撮影=上田順子、矢野詔次郎