ここに行かずして、福井美食は語れない!
さて、福井県を訪れたら、誰もが一度は訪れてみたいと憧れるのが、1890年創業の料亭「開花亭」。
国指定の登録有形文化財となっている空間は、2010年日本APECの晩餐会場となるなど、国内外の数多くの賓客をもてなししてきた、福井を代表する名店です。
その名店の味わいを、時代に合わせてスタイリッシュに提供している「開花亭 sou-an」。建築家・隈研吾氏が手がけた美空間も素晴らしく、43歳の若さで「現代の名工」に選出された畑地久満料理長の美味を、優雅にゆったりと堪能することができます。
ランチに立ち寄った渡辺シェフを出迎えるのは、この老舗の歴史を守り継ぐ5代目・開発(かいほつ)毅さん。
開発さん 「今日は、まだ世の中にほとんど出回っていない、特別なお酒をぜひお試しください」
そして、シャンパングラスに注がれるのは、「ESHIKOTO AWA 2018」。黒龍酒造が製造し、石田屋が販売する、知る人ぞ知る一本です。
世界基準のスパークリング日本酒として、世に送り出されたのはわずか1500本のみ。瓶内2次発酵で生み出される繊細な泡がグラスのなかで立ち昇ります。
渡辺シェフ 「きれいな泡ですね。きめも細かくて繊細。素晴らしいです」
この「ESHIKOTO AWA」、次のヴィンテージは2021年11月にリリース予定ですが、すでに予約完売だそう。とにかく今は、その名前だけでも覚えておきたい!
さて、スパークリング日本酒で乾杯したら、すかさず料理が登場。「開花亭sou-an」では、旧暦二十四節気に合わせて、旬味が詰まったお料理を提供しています。
もちろん食材は、若狭湾の新鮮な海の幸をはじめとした福井産が中心。さらに越前焼、越前漆など、伝統工芸の器に華やかに盛り付けられ、まさに「ローカルガストロノミー」の頂点がここにあるのです。
季節の優雅な香りがあふれる懐石コースは、日本料理の染みわたるような滋味に癒やされると同時に、フランス料理のようなプレゼンテーションを取り入れたりと、変幻自在。
世界最高峰レストランのセレクションガイド「La Liste」の全世界1000店のひとつに選ばれているほか、フランス生まれの歴史あるグルメガイド「ゴ・エ・ミヨ 2020」では、福井県内で最高評価を獲得している、馥郁とした美味。
それを比類ない空間で味わう……。まさに福井県にしかない美食体験です。
さて、この日の「食事」の一皿として登場したのは、「大吟醸グラニテ蕎麦」。蕎麦粉も福井県が誇るブランド食材です。
多くの産地が生産効率のいい改良品種を取り入れるなか、福井県では、昔ながらの在来種の蕎麦を丹精こめて栽培。その深みのある味わいがたまりません。
そして、蕎麦王国・福井名物といえば、越前おろし蕎麦。ピリ辛大根と蕎麦の風味が絶妙ですが、「開花亭sou-an」では、大根おろしに見立てた「大吟醸グラニテ」が蕎麦の上に。
ひんやり冷たいグラニテでさらに引き立つ蕎麦の風味。だしの最後の1滴まで飲み干して、渡辺シェフも大満足です。
渡辺シェフ 「福井県には、何度も来させていただいいますが、今回もとてもいい勉強をさせていただきました」
さて、渡辺シェフは東京に戻るため、同行しての取材はここまで。すると開発さんが「まだお時間あるのでしたら、このあたりにはいろいろ面白い場所もありますので、ご案内しましょう」。
まず訪ねたのが、「開花亭sou-an」の向かい側にあるコワーキングスペース「CRAFT BRIDGE」。その3階にはクラフトビールを味わえる「屋上 BAR BRIDGE」があります。
ゆったり過ごせるソファ席のほか、バーカウンターの奥にあるドアを開くと、ルーフトップにつながっていて、星空の下で「乾杯!」も可能。バーべーキューを楽しんだりできるほか、時折クラブイベントが開かれることも。
さらに歩いて10数秒のところには、「浜町 日々」も。長い歴史をもつ福井の芸妓文化を気軽に体験できる、隠れ家的なバーです。
開発さん 「芸妓さんというとハードルが高そうに思われるでしょ? でも、福井でしたら、こんな風に気軽に楽しめるのです」
浜町芸妓組合の風情ある一軒家の引き戸と開くと、落ち着きある空間が広がっていて、驚くのが金色に彩られた舞台が用意されているところ。
小唄をはじめとした伝統芸能のパフォーマンスが行われるほか、プロジェクターで芸妓さんが浮かびあがる試みもユニーク。女性ひとりでも気軽に立ち寄ることができて、おいしいお酒と肴を味わいながら、芸妓文化の粋を体感することができます。
◆ご紹介したお店の情報
開花亭 sou-an(福井市)
https://www.kaikatei.biz/souan/
CRAFT BRIDGE(福井市)
https://craftbridge.jp/
屋上 BAR BRIDGE(福井市)
https://www.facebook.com/rooftop.bridge/
浜町 日々(福井市)
http://www.hibi-neoya.com/
2021.04.14(水)
文・構成=矢野詔次郎
撮影=上田順子、矢野詔次郎