とても心に残っているのが、フランスの女性作家の『三つ編み』という小説 

――対談のお相手は、どのように選ぶのでしょうか?

 スタッフみんなで企画会議を開いてオファー先を決めていますが、いまのところは本に関わる方に限定してお願いする予定です。本屋さんだけでなく、作家や編集者、書評家、それに装丁家の方にもお話を聞いてみたいですね。

――装丁家という視点は、本をたくさん読まれる方ならではですね。

 ここ(COW BOOKS)に並んでいる本を見ても思いますけれど、装丁家のエネルギーが注がれた本ってすごいですよね。作りたいものを作る、という熱意が伝わってくる。

 日本ではデザイナーが表に出ることはあまりないですけれど、一方でこの人が手がける本なら絶対面白いはず、と読書通の間で注目されている装丁家さんもたくさんいて。そういうことを知ると読書がもっと楽しくなりますよね。

――最近読んだなかで、良かった本があれば教えてください。

 数年前から小さいなりにも会社を運営することになって、以前のように読書の時間をたくさんは取れないんですけれど……。

 少し前によく読んでいたのは女性作家の作品、とくに韓国のものが多かったですね。ソン・ウォンピョンの『アーモンド』とか、チョ・ナムジュの『82年生まれ、キム・ジヨン』とか……。

 日本の女性作家にも大好きな方がたくさんいるんですけれど、韓国の方たちの感覚をそれまで知らなかったので、新鮮で、興味深く読みました。

 それからもう一冊、とても心に残っているのが、フランスのレティシア・コロンバニという女性作家の、『三つ編み』という小説です。

 イタリアとカナダ、インドに暮らす、立場も年齢も違う3人の女性の人生が同時に描かれていて、困難を抱えながらも彼女たちがそれぞれに行動を起こすことで、まったく接点がないはずだった3つの軌道が交わっていくというストーリー。すごく素敵なフェミニズムのお話でした。

 自分がいまいる場所から一歩前に進むと、一緒に進む人がどこかにいて、その「音」が聞こえる気配がする……。私もときどきそんな感覚を抱くことがあるんですけれど、その世界観がすごく格好いいと思いました。

2021.04.05(月)
文=新田草子
撮影=榎本麻美