プリント柄の不織布メディカルマスクが人気

 前回お伝えした通り、パステルカラーからビビッドカラーへ、ビビッドカラーの品薄ぶりから、それを飛び越えプリントものへ……という流行をたどっている台湾の不織布メディカルマスクマーケット。

 今や政府要人も、出席する場に応じたモチーフのマスクを着用しているほどで、TPOはほぼない、と言っていいだろう。

 院内感染発生時、病院関係者の囲み取材で、看護師長的立場の女性が鮮やかな青と黒のバイカラーを着けていたときには、白衣とのギャップに驚いたが、それが許されるのが台湾だ。

 ちなみに、筆者の息子が通う公立小学校の担任教師は、派手派手な和柄マスクを着用している。メディカルマスクであれば、もうなんでもあり、なのだ。

医療用認証を得ていないマスクは敬遠される

 そもそも、なぜ医療用認証を受けているメディカルマスク「醫用口罩」がスタンダードなのか。

 それは、政府の有償配布制度で手に入るマスクが「醫用口罩」であるため、人々の間には“防疫に使用=医療用で当然”という意識が根付いているからである。

 バイク乗車時は効果に疑問が残る布マスク、そしてPM2.5には長く無頓着だった人々も、こと防疫となると、皆がビシッとメディカルマスクで決めてくる。それが台湾だ。

 それゆえ、医療用認証を受けていないマスク「防護口罩」は“このコロナ禍でわざわざ買うものではない”と敬遠される傾向にある。

 例えば、ドラッグストアにも華やかなプリントが目を引く、防護口罩が並んでいるのだが、薬剤師さんに聞いてみたところ、手に取っても棚に戻す人が多く、売れ行きは芳しくないという。

 また、会計時に「これはメディカルマスクではありませんが、よろしいですか」と確認すると、ほとんどの人が購入をやめるそうだ。

 ここには日本のマスクメーカーの商品も並んでいるが、台湾の医療用認証を受けていない某メーカーの箱マスクは、値下げを繰り返しても売り切ることができないでいる。ウレタンマスクも不人気商品だ。

 ちなみに、最近マスク専門店が登場し、話題になっているが、台北にある3社のうち、メディカルマスクだけを販売しているのは1社のみというのが少々残念だ。

2021.03.16(火)
文=堀 由美子
撮影=深野未季