そもそも私は相手の私生活をそんなに覗きたいとも思わないし、自分のも見てほしいとも思わないんですよね。あの、家族でもない人の日常がダーッと流れ込んでくる感じが自分にはしんどかったです。
7つ下の妹がいるんですけど、わたしが昨日書いたつぶやきを『今日はこんな気持ちじゃないから消そう』とかって削除していたら、『お姉ちゃんみたいに一言一言重く考えていたらSNSなんてできないよ』と言われて、自分はSNSに向いてない、とはっきり悟りました」
「女ともだち」という切実な問題
「女の上っ面の慰め合いや愚痴や井戸端会議を、軽蔑したり、莫迦にして笑う男……、そうだね、女にもよく居るよね。じゃあ遠くで笑うやつらに何が出来るってのよって感じ。相手の心をえぐって真実を突きつける辛辣さが、人を傷つけないように配慮された言葉よりも高尚だなんて誰が言えるのよ」
SNSを通じて出会った栄利子と翔子は、共に「女友だち」がいない。世間では友だちは多いほうがいいとされているし、特に女にとっては(たとえは古いが『SEX AND THE CITY』のような)、女友だちさえいれば人生の艱難辛苦も乗り越えられるといった類の創作物を浴びて育ってきていることもあり、男のそれより切迫した、切実な問題だ。
加えて、女同士の関係を「ドロドロしてそう」と忌み嫌い、「さばけた話のわかる女」だけを仲間と認める男社会の規範を自分の中に取り込んでしまう女もいる。
女ともだちを持たない女は卑屈になり、男の視点を内在化した女はねじくれ、「女子会」的なものに敵意をむき出しにする。それでも、傷つきながら必死に女友だちを求める栄利子は、あなたの目に滑稽に映るだろうか。
「一生懸命生きている人ってだいたい“イタい”ですよ」
「一生懸命生きている人ってだいたい“イタい”ですよ。でも、そうやって頑張っている人を『あいつはヤバい』『イタいやつ』と遠くから言うのは簡単ですが、痛い思いをしないと成長もできないと思うんです。
2021.02.16(火)
文=小泉 なつみ
写真=鈴木七絵