花を買って家に飾る、それだけでも十分に豊かな時間を過ごせるけど、花の楽しみ方はノールール。今まで知らなかった新しい花との付き合い方を、フラワーデザイナーの佐藤俊輔さんがお届け。もっと自由に花と触れ合って、プレイフルな日々を楽しもう。


「1月の桜」、国産のバラなど、希少な花を飾ってみよう

 新しい年の初め、ちょっと背伸びして、希少で高価な花を自宅に飾ってみませんか?

 そもそも花の値段はどうやって決まるのでしょうか?

 花は魚や野菜などと同じように市場で取引されますから、季節や産地、取引量などで市場価格は変動します。

 魚や野菜と違う、花ならではの特徴といえば、切り花は茎の長いものが価値が高いとされ、価格も高いことが多いです。

 理由は簡単で、茎が長い方が様々なアレンジや装飾に利用できるから。逆に茎が短いと小さなアレンジしか作れないので、同じ種類の花でしたら茎の短い方が、価格が低くなる傾向にあります。

 また、茎が長いと花が長持ちするというのも嬉しいポイントです。花は茎の切り口にバクテリアが繁殖することで水を運ぶ導管が塞がって枯れてしまいますが、茎が長ければこまめに切って、新しく清潔な切り口を保つことができます。花の茎を少しずつカットすることで、場合によっては花持ちが数週間変わることもありますよ。

 以前、東京ビッグサイトで行われた花の展示会を訪れた際、南米・エクアドルから輸入された長さ180センチメートルほどの巨大なバラを目にしたことがあります。通年出回るものではなく、ごく限られた時期にしか輸入されないもので、参考取引価格は1本数千円の値段がついていました。

 180センチメートルのバラに高い値段がついたのは、茎が長いという理由ももちろんありますが、他では手に入らない希少性もポイントとしてあげられます。

 希少な花には高い価値があります。例えば、バラの品種は世界に2万種類以上あるといわれていますが、この中には日本で生まれたものもありますし、ある特定の農家さんでしか育てられていない品種というものも存在します。

 そういった品種は、出回る量も少なく、時期も限定されているので価値が高くなります。花屋を眺めてみて、漢字やひらがなを用いた、日本らしい名前がついたバラを見かけたら要チェックです。もしかしたらそれは、その日、その時、その地域でしか手に入らない高価値のバラかもしれません。

 価値を生むもうひとつの基準として、季節先取りということがあります。これは魚や野菜と共通するところで、春から初夏のカツオや、晩夏にいちはやくお目見えする松茸など、いわゆる初物と呼ばれるものです。

 江戸っ子が1本1両(今の価格で10万円前後)で初カツオを求めたことは有名な話です。花にも季節がありますから、当然初物という概念も存在します。

 新春を過ぎるとまもなく、特殊な方法で開花させた桜が少しずつ出回りはじめます。ひと足早く春を感じることができる1月の桜には特別な価値があるといえるでしょう。

 その他にも春のひまわり、夏の秋桜、冬のミモザなど。まだ誰も手に入れていない時に、自分だけが違う季節を生きる感覚に高い価値がつけられることにもうなずけます。

2021.01.19(火)
文=佐藤俊輔
写真=佐川大輔(人物)