60~70年代アイドルのカッコ良さに泣くほど惚れる曲

●西城秀樹「勇気があれば」

 王道ど真ん中ストレートで「さあ、ヒデキの魂を感じる声を聴きなさい~!」とばかりに壮大になっていく世界観。

  2番、「そこにほら明日が」といったん落ち着いてから神転調があり、聴いているこちらもゆっくり目線が斜め上に向く。

 そして誰かが隣にいたら、自然と肩を組んで一緒に横揺れしたくなる。勇気を表現するのにヒネリはいらない、そう教えてくれるメロディーだ。

●野口五郎「真夏の夜の夢」

 鍵盤の音がダカダカと胸震わせる情熱的な前奏。なかなかサビに行かない思わせぶりな進行。

 「ああ かき鳴らす」の「ああ」のゴローの高音から一気に畳みかけてくる「夢よ夢よ~」の連打に「ありがとう! 歌ってくれてありがとう!」とゴローにイチコロになる。

 まさに惚れ薬を手に入れた感覚になる一曲。

●郷ひろみ「洪水の前」

 筒美京平メロディーで外せないのが郷ひろみ。多くのアゲアゲの楽曲で世の中を明るくしてくれたが、その中でもアゲアゲアゲアゲぐらいに心躍るのがこの曲。

 サンバのリズムと、狂おしいほどの片想いの切なさが、これほど絶妙にミックスしたメロディーが今まであっただろうか!

 あらゆる打楽器がスカポコスカポコ鳴り続け心臓の音を思わせる。間奏がこれまた胸騒ぎいっぱいなのでフルで聴こう。

●木の実ナナ「真赤なブーツ」

 最初の歌詞「ブーツ」を、歌うのではなく叫ばせるという挑戦的な試み!

 木の実ナナさんの声が荒くれボクサーのパンチの如くボン! と飛び出て聴き手の心を殴り、一度引っ込んでこれまた「ブーツ!」と衝撃波が戻ってくるというレアな体験ができる。

 私の言っていることがイマイチ分からないという人は、とにかく聴いてほしい。

●榊原郁恵「ROBOT」

 郁恵ちゃんのテクノ。疾走感がすごいので、心が振り落とされないよう手にエア操縦桿を握るイメージを持って聞くのがおすすめだ。

 ピコピコトントンと進んでいくメロディーが、「あなたが好きなの」という部分で、感情が溢れ出すようトロリと変わっていくところにグッとくる。

2020.11.16(月)
文=田中 稲