最も若い3代目相棒は成宮寛貴

 神戸の後を継ぎ、season11から13まで3代目相棒を務めたのは、最も若い「カイトくん」こと甲斐享(かいとおる・成宮寛貴)だ。

 話は右京とカイトが偶然香港で出会うところから始まる。最初はお互いの身分を知らなかった2人だが、香港領事館で起きた拳銃暴発事件隠ぺいに一緒に立ち向かっていく。カイトは警察庁次長の息子という“七光り”の持ち主だが、父親への反発心もあり青臭い正義感で突っ走っていたが、そんな姿を見て右京はカイトを相棒に指名するのだ。

 少しタイプは違うものの、カイトは初代相棒の薫と同じ“武家顔”ד肉体派”だ。カイトが暴れることで作品に動きが増し、作品全体のトーンは明るかった。

 当初、カイトは“チャラく、生意気で、短絡的な若者”だったが、右京への尊敬の念を深めるにつれ、落ち着いた警察官に成長していく。右京もカイトの内なる正義感を「警察官にとって一番必要なものを持っている」と評価し、右腕として重用した。薫との関係同様、心を通わせた相棒関係を築いていく。ときには“おじいちゃんと孫”のような仲の良さも見せていた。

 しかしseason13の最終回で、カイトが親友の妹が殺された事件をきっかけに、犯罪者に暴力で制裁を加える「ダークナイト」として様々な事件を起していたことが発覚する。カイトは逮捕され、特命係は休止に追い込まれ、右京はイギリスへと旅立つことになってしまう。

 カイトはなぜ犯罪に手を染めてしまったのか、疑問は残るばかりだ。しかしラストで描かれた右京の乗った飛行機を、涙を浮かべて見送るカイトの姿を見ると、どうやら右京への思いだけはウソではなかったようだ。

反町隆史演じる4代目はハイブリッド

 ここまでの3代の相棒を振り返ると、ビジュアル、能力、関係性は前任者と対照的なキャラクターとして描かれている。

 しかしこのセオリーが4代目で崩されるのだ。

「ニコイチなんて勝手に決めつけないでくれません?」

 4代目相棒として登場したのが反町隆史演じる、法務省から警視庁へ出向したキャリア官僚・冠城亘だ。高身長で浅黒い冠城のビジュアルは完全に“武家顔”。暴力団を右京とともに制圧した格闘能力の高さなどからは“肉体派”にも見える。女ったらしで冗談が好きな冠城の明るさは、薫やカイトの“武家顔”ד肉体派”の系譜を継いでいる。

 しかし仕事となると“頭脳派”だ。早慶大学法学部法律学科出身の頭脳と、自ら法務省をやめて特命係に正式加入するような正義感を持ち、右京と別行動をして捜査する独自性もある。右京と別行動する理由を問われると「ニコイチなんて勝手に決めつけないでくれません?」と言い放つが、そこには自身の人脈やスマートな交渉術で情報収集できる根拠のある自信がみなぎっている。

 冠城は“武家顔”ד肉体派”であると同時に、右京と渡り合える“頭脳派”でもあるのだ。このハイブリッドさゆえに、冠城はこれまでの相棒たちと違う関係を右京と築いていく。

2020.10.26(月)
文=田幸 和歌子