成功のカギは「チャレンジしたい人」を求めたこと

 実際、都会のようにコンビニもないしモールもないが、挑戦したい人を求めていて、みんな地域のために努力している。廃校になる寸前の学校を立て直すため企画された本州から船で渡る「島留学」は、定員オーバーになったという。“メチャクチャキツイよ”というキャッチフレーズで、漁業の定置網の仕事を募集したところ元教師が移住してきていたりする。

 今は物質主義が限界に達して、本当の幸せを考え直す時期。ライフスタイルに共感する場所を探し移住するのも一つの方法と開き直り、定住はしてくれなくてもいいから、チャレンジしたい人に来て欲しい、と打ち出したところに成功のカギがある。

 以前は、東京は最先端で、海士町は最後尾だった。だけどここ数年、無いものが無いのが良いとか、もっと物質至上主義から精神的なものに変わっている。実際に最後尾は最先端になれるチャンスがある、ということ。

 冬が一番美味しい時期で肉厚で肝にも脂がのった旨みを感じる寒シマメ(スルメイカ)。これを前出のCASを使って素材本来の旨み・香り・みずみずしさを味わえるようにした、名物「隠岐の寒シマメ肝醤油漬け」を、海士町の歴史、未来、人々、文化を感じながら、ご飯にたっぷり載せていただく。これぞコロナ時代の新しい体験ではないだろうか。

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2020.10.20(火)
文=本田直之