毎年行われている海ガメの産卵調査で分かったこと

 西の浜では毎年5月から9月にかけて、海ガメが産卵に訪れます。しかも、日本の砂浜に上陸して見られる3種類の海ガメ(アオウミガメ、アカウミガメ、タイマイ)が勢揃い。

 そんな西の浜で1978年から産卵調査を行っているのが、特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会付属「黒島研究所」。今年で43年目を迎え、これは沖縄の海ガメ調査に関しては最長を誇ります。

 黒島研究所では、海ガメのみならず八重山海域の生物の生態やサンゴ礁のモニタリング調査も行っています。

 有料で入場できる展示室では、3種類の海ガメやヤシガニ、サキシマハブなど、黒島に生息している生き物が飼育されているほか、サンゴやイルカの骨格標本も。

 長年の研究から培われた資料も、興味深いものばかりです。

 たとえば、ウミガメのオス・メスは産卵場所の砂の温度で決まる(29度以下ならばオス、それ以上ならばメス)。個体ごとに甲羅の模様が異なるなど、ここで初めて知ったことがたくさんあります。

 毎年発表されている西の浜での2020年度海ガメ産卵調査が先日、発表されました。

 今年はアオウミガメが上陸35回のうち産卵14回、タイマイは上陸9回のうち産卵6回。残念なことに、アカウミガメは姿を見せず、これは2017年から続いています。

 また、ダイビングやスノーケリングでアオウミガメを水中で見かけることが多くなったのも、八重山諸島をはじめ、世界的な傾向だそうです。

 これはダイバーや観光的には喜ばしいことだけれど、地元の漁師さんにとっては悩ましいこと。

 海藻を食料とするアオウミガメが増えると、藻場がなくなってしまいます。すると、魚がいなくなる。また、アオウミガメが網に絡まると、大切な道具が破かれてしまう……。

 アオウミガメは個体数の増加に伴い、全体的に成長が遅くなってきているそう。つまり、繁殖期に達するのに年月がかかり、いずれ数が抑えられるかもしれません、とのこと。

 主任研究員の亀田和成さんは、「数十年単位の長い目で見ると、これも自然の流れのひとつ。大騒ぎしなくても大丈夫」と言います。

 データの異変はどうも気になるもの。けれど、自然にはフレキシブルに対応する、人知を超えたパワーがあります。自然は自然にまかせておくのが、正解なのかもしれません。

※新型コロナウイルス感染防止のため、来訪の際は自治体のホームページをご参照ください。受け入れ側にお問い合わせのうえ、ご判断ください。

黒島

●アクセス 石垣島の空港から石垣港離島ターミナルへは路線バスで35~50分。そこから高速船、フェリーで30分。


【取材協力】

黒島研究所 http://www.kuroshima.org/
竹富町観光協会 https://painusima.com/

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

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2020.10.24(土)
文・撮影=古関千恵子