「完全に今回は獲りに来てますね」

 1つのネタの中で同じ流れを何度も繰り返すのは、ジャルジャルが得意とするパターンだ。このネタでは、同じ流れの中で事態がどんどん発展していく。そのため、雪原で雪玉を転がして大きくしていくように、ネタが進むにつれてどんどん笑いが大きくなっていく。

 社長が何度も歌を止めるなと怒るところが笑いのポイントなのだが、見ているうちにそれ以外の部分でもずっと笑いがこみ上げてくるような感覚に陥る。歌が効果的に用いられているため、見る人がネタの世界観に自然に引き込まれていく。

審査員を務めた松本人志 ©文藝春秋
審査員を務めた松本人志 ©文藝春秋

 この1本目のネタを評して、審査員の1人である松本人志は「ジャルジャルは完全に今回は獲りに来てますね。マニアックすぎるネタをちょっと落としてきて。割と今回わかりやすくて面白いのをちゃんと持ってきたね」とコメントした。

 これまでのジャルジャルのネタの中には、同じ流れを繰り返すだけで終わるようなものもあった。2010年の『キングオブコント』決勝で披露した「おばはん」とひたすら連呼するネタなどが代表例だ。その手のネタは、あえて1つのフレーズで押し切っているところが玄人ウケする要素ではあるのだが、大衆ウケという意味ではやや物足りないところがあった。

2020.10.04(日)
文=ラリー遠田