“ありえないけどリアル”だった2本目

 今回のジャルジャルはその弱点を自ら克服するようなネタを演じた。後半に進むにつれて右肩上がりに盛り上がっていく仕掛けを作ったのだ。それによって高得点を獲得して、決勝ファーストステージを1位で通過した。

 彼らが2本目に披露したのは「空き巣タンバリン」。先輩・後輩の2人組の空き巣がオフィスに忍び込んで金庫を開けようとするのだが、後輩の方がなぜかタンバリンを持ってきている。絶対に物音を立ててはいけない状況で、その後輩は何度もタンバリンを鳴らしてしまう。

「静かにしなければいけない状況で大きな音を出してしまう」という笑いの取り方自体は、一昔前のコントでもありそうなほどオーソドックスなものだ。だが、ジャルジャルは「ありえないほど何度も鳴らす」という方向に極端に振り切ることで、自分たちの持ち味を出した。

 そのありえない状況にリアリティを与えているのが、頼りない後輩を演じる福徳の演技の上手さだ。この後輩はふざけて大きい音を出しているわけではなく、あくまでもうっかり音を出してしまっている。だから、音が出て先輩に注意されたときに申し訳なさそうな引きつった顔を浮かべる。そのキャラクターを表情ひとつで見事に表現していた。

 さらに、このネタはオチもきれいに決まっていた。コントにおいてオチは必ずしも重要なものではなく、かつてのジャルジャルのコントでははっきりしたオチがないものも多かった。だが、このネタでは明確なオチが用意されていた。

 大きな音を出しまくる後輩にあきれて、先輩は一度はその場を立ち去る。だが、すぐに戻ってきて「お前を置いて逃げるわけないやろ。こんなにかわいらしいやつ」と言って、2人で一緒に部屋を出ていく。何とも心温まるオチだった。

ジャルジャルに1つだけ足りなかった“パーツ”

 ジャルジャルは、そのネタと演技が機械のように正確無比であることから「人間味がない」と批判されることも多いコンビだった。

 コントの天才であるはずのジャルジャルが『キングオブコント』でどうしても勝ち切れなかったのは、そこにも原因があったのではないか。機械的な展開や投げやりなオチのせいで、人間味がなくて物足りないというふうに思われていたかもしれないのだ。

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 私は、2本目のコントのオチを見て、あのジャルジャルがついに「人間味のなさ」という欠点を克服した、と感じた。短いネタの中で、空き巣の2人の普段の関係性や、お互いをどう思っているのかということが自然に伝わってきた。

 コントを演じるために必要なすべての部品を揃えていたはずの「コントマシーン」ジャルジャルには、1つだけ足りない「人間味」というパーツがあった。そのパーツを補ったことで完全無欠のコントマシーンとなった彼らは、悲願の優勝を果たしたのだ。

2020.10.04(日)
文=ラリー遠田