独特な発音の多良間島の方言は 1本の道を境に東西で異なる
このビーチにまつわる言い伝えを、散策中のおじいさんから聞きました。
唐からこのビーチに上陸した船長が島の人に「ほしいものはないか」と尋ねました。すると、「なにか、言葉をください」と。
そこで船長は「キィムンディバ、ティピィキ。ツィムヌーティスカ・ティープスキー」という言葉を与えました。これは、「心が荒くなったら、手を引きなさい。手を出そうとした時は、心を引きなさい」という、自分を律する意味。仲良く暮らすための知恵の言葉です。
が、実は、おじいさんに取材ノートに書いてもらった言葉の表記は、これとはちょっと違います。正しくは、ィ(小書き文字のイ)脇に小さな丸、半濁点が付きます。さらにいうと、ふるさと海浜公園へ下りるとぅぶりの名前も、「トゥガリ゜ラトゥブリ」。リに半濁点が付きます。
これは、多良間島の方言の発音標記。多良間島の方言は宮古方言と八重山方言から影響を受け、動詞は宮古方言、形容詞は北琉球や八重山方言の特徴があるそう。
しかも多良間島の中でも、村役場前の道を境に西側の仲筋と東側の塩川、字(あざ)によって、音韻的な違いがあるとか。
たとえば、「買う」ことを、仲筋ではカウ、塩川ではコー。よく聞くのは山が言葉の障壁となり、山を越えると方言が違うという説。けれど平坦な小さな島で、通りを隔てただけで違いが起きるとは。
さらに不思議なのは、この島に伝わる国の重要無形民俗文化財の「八月踊り」。これは旧暦の8月8日に3日間にわたって繰り広げられる豊年祭です。
起源は定かではありませんが、1637年から課された厳しい人頭税制度によって苦しんだ人々が、上納を終えた喜びと翌年の豊年を祈願したのが始まりとされています。祭りの期間中は民俗踊りや古典踊り、組踊りなど、数々の伝統舞踊が披露されます(2020年は神事のみ)。
この八月踊りも、西の仲筋と東の塩川、字で踊りの演目が異なるそうです。
15世紀後期の土原豊見親(ンタバルトゥユミャ)という英雄が集落を統一するまでは、集落ごとに小競り合いもあったとか。それが、言葉や祭りの演目の違い? 多良間島には、不思議がたくさんあります。
ちなみに2020年9月19日(土)、多良間村地域振興拠点施設の1階に、お土産品&イートイン店「すまむぬたらま」がプレオープン。これまで多良間島になかった、観光客も気軽に休憩できるスポットです。
※新型コロナウイルス感染防止のため、来島は自治体のホームページをご参照ください。受け入れ側にお問い合わせのうえ、ご判断ください。
多良間島
●アクセス 宮古島から空路で約20分。または宮古島からフェリーで約2時間
●おすすめステイ先 夢パティオたらま
電話番号 0980-79-2988
取材協力/多良間村ふしゃぬふ観光協会
https://kyodomarine.wixsite.com/tarama2/
Column
古関千恵子の世界極楽ビーチ百景
一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!
2020.09.26(土)
文・撮影=古関千恵子